【学校安全のリデザイン(3)】緊急時の子供の行動に着目

日本こどもの安全教育総合研究所理事長 宮田 美恵子
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2019年、川崎市でスクールバスを待つ児童らが、刃物を持った男に突然襲われる死傷事件が起こり、教育現場は不安を抱えることとなった。

事件は「防ぎようがなかった」のか。大変難しいケースだが、予防の観点でできることはなかったのか。こうしたテロとも呼ぶべきケースで、学校や地域、保護者にできることは限られている。むしろ居合わせた一般人が子供を守ろうとして巻き込まれ、被害が拡大する恐れもある。

それを踏まえて、川崎の事件について、被害者の視点で被害防止について述べる。

わが国では、学校は聖域という認識が根強く、安全神話が成り立っていた。しかし、学校に不審者が侵入し、15人もの児童、教員らが犠牲になった01年の池田小事件を契機に、学校の安全管理や通学路を含めた子供の安全対策のステージは確実に上がった。

全国で「地域ぐるみの安全対策」が展開されるようになり、パトロールや見守り活動などが動き出した。それから約20年、川崎の事件は、さらにそのステージを上げる必要があることを社会に示した。

では、一段上のステージとは何か。それは防犯の専門家の力、すなわち警察官やそのOBの力を借りることだ。以前から通学路に配置されているスクールガードリーダーも警察OBだが、地域のボランティアと同じ蛍光色のベストを着用しているため、そこに防犯の専門家がいると周囲には分からない。

そこで、警察OBである交番相談員と同じ制服を着用して、遠目にも専門家がいることを見せるのがポイントだ。「見せる防犯」として専門家を活用する。これは事件後しばらくの間だけでなく、登下校時のルーティンとなるよう全国に定着させたい。

一方で、刃物を持った人間に対し子供ができることは極めて少ない。しかし川崎の事件では、コンビニに逃げ込んだ子供が十数人いた。子供はコンビニが「いつでもやっている」「大人がいる」ことを知っていて、なおかつ身近で親しみのある場所でもある。緊急場面での行動を指導する際は、子供が行動しやすいかどうかという視点で考えることが大切だ。

実際、現在もコンビニの協力の下、子供が緊急時に安心して駆け込める場として機能している。「こども110番の家」と共に、今後も社会の安全・安心インフラとなってもらうような協力体制を築きたい。学校、保護者と地域が連携し、コンビニを含めた具体的な避難訓練ができる体制づくりを進められるとよい。例えば、避難場所になりそうなコンビニに学校側から依頼し、まちぐるみの避難訓練を実施するのも一案である。ただし、コンビニ側の負担も考慮しなければならない。理解を得られるよう、普段からの相談も欠かせない。

緊急時の子供の行動を踏まえ、地域で何ができるか、どこで協力を得られるのか、家庭・地域・学校が改めて協議する必要がある。

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