【学校安全のリデザイン(4)】加害者を生まないために

日本こどもの安全教育総合研究所理事長 宮田 美恵子
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川崎スクールバス襲撃事件について、今回は加害者の視点で捉えたい。

この事件は、声掛けによる連れ去りとは異なり、まさにテロ的であった。付属池田小事件しかり、こうした事件を引き起こした犯人の成育歴からは、複雑な家庭環境に置かれ、十分な愛情を注がれないまま大人にならざるを得なかったことがうかがえるケースが少なくない。

もちろん、そうした事情があろうと決して犯罪行為を肯定する要素にはならないが、子供を加害者にしないために、ひいては悲惨な事件を予防するために、ひとつの側面として見逃すことはできない。

川崎の事件で象徴的だったのは、子供らを襲った犯人としてメディアが映し出したのが、中学生の頃の写真だったことだ。その後の写真がなかったのかもしれない。

置かれた状況が変わることなく、生きづらさを抱え、そこから抜け出す方法も見いだせぬまま年齢だけ重ねたとも解釈できる。テロ的に多数の子供をターゲットにした犯行は、まるで自らの人生に終止符を打つかのように、また長年の怒りを社会に見せつけるためだったようにも思える。

この問題の裏側に潜むのは、ひきこもりの高齢化だ。1980~90年代に子供のひきこもりが問題となったが、それから約40年が経過して50代になった当事者を、80代になった親が年金で養い続けている状況が問題視されている。いわゆる「8050問題」である。親子共々生活が立ちいかなくなり、社会から孤立してしまう深刻さをはらんでいる。

子供がひきこもる原因として、いじめなどによる不登校や、発達障害や精神障害などが挙げられている。また成人の場合、失業や病気、職場環境によるストレス、ハラスメントなどがきっかけになるケースが多い。

さらに日本では、失業などで一度レールを外れると戻るのが容易ではないと考えられているため、しっかりとしたケアを受けずに無理をしてしまうことも少なくない。自分を守るために、ひきこもり生活を余儀なくされるケースもあり、誰もがその当事者になる可能性を持っている。

こうした状況を生まないために、学校では、いじめやそれにまつわる不登校の長期化による将来的な問題も視野に入れた、早期の気付きやサポートが必要になる。もちろん、学校でできることには限りがあるものの、多くの大人の目を注ぎ、個々の子供のニーズに合った支援につなげることが重要である。

幼少期の経験が必ずしも犯罪につながるわけではない。しかし、幼い頃からネガティブな感情を抱え込んで過ごすことのないよう、どの子供も一人の大事な存在として、健康で安全に、安心して子供時代を送れるよう、大人はその支援の形を真剣に考えていかなければならないだろう。

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