【自己肯定感を育む11の方法(1)】自己肯定感の低さをどうみるか

MP人間科学研究所代表/心理学博士 榎本 博明
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日本の子どもたちの自己肯定感の低さが問題とされることが多い。自己肯定感とは、自分自身を肯定的にみる心理傾向をいい、自尊心にほぼ等しい。

国立青少年教育振興機構が2017年に高校生を対象に実施した国際比較調査をみても、「私は価値のある人間だと思う」に「そうだ」と答えた割合は、米国53.2%、韓国48.5%、中国27.9%なのに対して、日本は9.6%と極端に低い。「私はいまの自分に満足している」に「そうだ」と答えた割合も、米国39.4%、韓国33.6%、中国16.0%に対して、日本は8.7%と、これまた極端に低い。

なぜ日本の子どもたちの自己肯定感が低いのか。そこには文化的要因が深く関係している。実は、このような形で測定した場合、子どもに限らず日本人は総じて自己肯定感が低くなる。そもそも自己を肯定し、虚勢であったとしても自信満々に振る舞い自己主張していくのは、欧米文化において重視されてきた価値観である。

一方、日本では、謙遜や謙虚さを美徳とするため、自己肯定は控えめにして相手を尊重することが重んじられる。自己を肯定しすぎるのは見苦しい、といった感受性がある。

私自身、このような質問紙調査と面接調査を併用して検討したことがある。その結果、質問紙調査で自己肯定感が非常に低い人物の中にも、面接では自分自身や自分の人生を嘆く者ばかりでなく、ゆったりとした安定感があり、人生を前向きに受容している印象の者もいることを見いだしている。

ゆえに、このようなデータを真に受けて問題視すること自体、大きな勘違いに基づくものと言わねばならない。ただし、欧米流の自信満々の振る舞いも、日本流の控えめな振る舞いも、それぞれの文化に適応した自己呈示(自分が望む印象を与えるために、自分に関する情報を操作して与えること)によって身に付けられたものと言える。いずれの場合も、人生を前向きに歩んでいくためには、心の底において自分自身を肯定していることが必要なのは言うまでもない。

では、そのためにはどのような条件が求められるのか。本連載では、そのような視点から基本的な自己肯定感を育む方法について考えていきたい。

【プロフィール】

えのもと・ひろあき 1955年東京生まれ。東京大学教育学部教育心理学科卒業、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。大阪大学大学院助教授等を経て、現在、MP人間科学研究所代表。博士(心理学)。著書に『伸びる子どもは○○がすごい』(日本経済新聞出版社)『ほめると子どもはダメになる』(新潮社)など多数。

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