【学校安全のリデザイン(5)】 学校における防犯環境設計

日本こどもの安全教育総合研究所理事長 宮田 美恵子
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2001年に起きた池田小事件では、開いていた入り口から犯人が侵入したことから、学校の安全管理の在り方も問われた。付属学校の性質上、一般的な公立校と異なり、子供たちは受験を経て入学し、制服を着て校区を超えて通ってくる。自分たちが住むまちに存在しながらも接点のない「特別な学校」は、周囲の住民や地域の無関心を生み出しやすい。そして無関心は、犯罪を呼び込む。

防犯のまちづくりの考え方として参考になるものに、「防犯環境設計論」(C. Jefferyら、1971年)のCPTED(セプテッド:Crime Prevention Through Environmental Design)がある。その基本となるのは「人間の行動は環境によってコントロールすることができる」という考え方だ。防犯という目的に向けて、環境の配置や物の形を変えることで、人間の行動をコントロールしていく。このような、犯行に及ぼうとする人間の行動を制御し、犯罪を予防する考え方を「犯罪機会論」と呼ぶ。

CPTEDには4つの基本原則がある。①領域性の確保②監視性の確保③接近性の制御④対象の強化――だ。

この原則を学校に当てはめてみよう。まず①の領域性を明らかにするために、敷地の境界をフェンスや植栽などで示す。これにより休日や夜間でも、学校に無関係な人の勝手な立ち入りを防止する。

②については、不審者の侵入を監視・抑止するために、防犯カメラの設置や学校関係者による巡回、もしくは地域のボランティアなどの見守りを強化する。

③は、学校への無断・無用の立ち入りを禁じるため、来訪者が目的の場所(例えば体育館や会議で使用する教室)に向かう際の導線を限定する。

④は、学校自体を犯罪に強くする。例えば、正門や裏門の確実な施錠、警備体制の厳重化、②の監視性の確保にもつながる防犯カメラの設置などを行う。

これら4原則に次の2点を加える場合もある。1つはイメージの向上と改善だ。校内および学校周辺の美化に努め、ごみや落書きのない、清掃・整理整頓が行き届いた環境にする。登下校時に子供たちが地域の人たちと元気にあいさつを交わす活気ある雰囲気と、教職員の意識の高さを示すことで、地域社会から隔絶した学校ではない点をアピールする。

2つ目は地域活動の支援である。志の高いボランティアによる組織活動、保護者や住民による見守り活動が継続的に行われ、通学路など人目につくところでその様子が確認できることも重要である。学校と地域の境界となる校門前は防犯上の盲点になりやすい。登下校時に、教職員や保護者、地域ボランティアがこの境界をふさぎ、子供たちを迎え、送り出すことには深い意味がある。学校安全は、学校を中心に広がる地域を含めた広義の安全管理をイメージする必要がある。

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