【学校安全のリデザイン(6)】子供の被害実態と防犯力

日本こどもの安全教育総合研究所理事長 宮田 美恵子
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筆者は、子供が実際に受けた犯罪の前兆的行為や暴力などの深刻な事案について調査したことがある。その結果、小学生の13.0%がいずれかの遭遇経験を持っていた。

具体的には、不自然な声掛け、つきまとい、待ち伏せなどである。それらの行為に対し、子供が取った行動は①逃走(49.3%)②声による危険の周知(5.3%)③こども110番の家の活用(4.0%)④防犯ブザーの活用(4.0%)――などであった。

最も多い①も、半数の子供は対応できていなかった。危険から素早く遠ざかるには「ノーランドセル」の練習が効果的だ。自分の命を守るため、重いランドセルを放置して身軽になるのがノーランドセルである。これを行うだけでも、10秒間に3メートルも遠くへ逃げられるケースがあることが筆者の実験・計測で分かっている。

②は大声で助けを求めることであるが、人間は怖い思いをしたり驚いたりすると緊張状態になり、声が出にくくなる。近年は子供たちが外で大声を出す機会も少なくなっているだけに、危険を伝える大きな声を出す練習をしたり、相手にはっきり聞こえるようにあいさつや返事をしたりする習慣を付けることも大事だ。

③にも課題がある。ノーランドセルでこども110番の家に駆け込み、大人に危険な状態を伝えられればいいのだが、4%という数字が物語るように、その家の住人と面識がなければ子供は訪ねにくいものだ。通学路のどこにあり、どんな人が暮らしているのか、子供自身が知っているとよい。事前に親子で訪ねておくのも有効だ。学校での防犯教育には、家庭の指導と地域の連携・協力が欠かせない。

①も活用割合が少ない。防犯ブザーは全国で9割超の小学校1年生に配布されているが、学年が上がるにしたがって携行しない児童が増え、また携行していても壊れていたり、電池切れというケースもある。

使用可能であっても、ランドセルのベルトに付けっぱなしにしていると、緊急時に気が回らず役に立たないことがある。これを防ぐには、外出時や学校から帰る直前に鳴らす習慣を付けるとよい。意識が高まり、電池切れや故障に気付くことができる。防犯ブザーを配布して終わりではなく、その後の指導が必要である。

児童が緊急時にできることはそう多くない。学校での指導では、子供たちの緊急時の対応傾向を基に、やりにくいことをやりやすく、やりやすいことをさらにやりやすくできるよう、工夫して学ばせるのが大切である。

筆者は、こうした緊急時の離脱行動力を高める目的で、調査や実験、計測結果に基づいて構成した「防犯体験ミヤタメソッド」を学校の授業に導入している。

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