【学校安全のリデザイン(7)】特別な支援を要する子供の犯罪被害

日本こどもの安全教育総合研究所理事長 宮田 美恵子
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近年、発達障害のある子供が増加している。文科省の調査によると、発達障害の可能性をうかがわせる児童生徒は6.5%程度、1学級に2、3人の割合で存在するという。こうした状況下、教科指導だけでなく、災害や犯罪、事故などの緊急事態への対応にも不安や困難の声が聞かれる。

学校の防犯指導が強化される一方、通常学級では特別な支援を要する子供に特化した防犯指導が行われていないことが多く、インクルーシブ教育システムの中で、個々人に必要な合理的配慮を提供すべきかどうか議論の余地がある。そもそも、要支援児童生徒の犯罪被害に関するデータが不足しているのが現状だ。

そこで筆者は、こうした子供の登下校時の被害状況や犯罪の前兆的行為、犯罪行為に対し、教員が指導上の困難を感じるポイントや意識、ニーズなどの傾向を調査した。

結果、教員が知り得た情報として、小学生では▽凝視(1人)▽その他(1人)――の被害が、中学生では▽下半身など体を見せられた(1人)▽暴力・暴行に遭った(2人)▽脅かされた(1人)――の被害が挙げられた。小学生の「その他」のケースは、大変深刻な事案であった。こうしたデータは従来ほとんど存在せず、一般の調査に埋もれてしまっているか、被害申告すらされていない可能性もある。

別の保護者を対象とした調査では、わが子について次のような意見や学校への要望、心配が寄せられた。

「自力で助けを求める力はないが、防犯グッズを持たせると緊急時でなくても鳴らしてみたい衝動に駆られるため持たせられない」

「自分で被害を訴えることが難しいので、登校時に異常がないか確認してほしい」

「被害加害の理解が乏しく、被害者として助けを求めることも加害者として状況を伝えることも困難。障害に理解のない人が対応した場合、事実とは違うストーリーが作られないか非常に不安」。

2つの調査から読み取れるのは、子供は障害によって状況判断や対応が難しく、そもそも向けられた行為の犯罪性を認知していないために、被害実態があっても申告しないケースがある可能性だ。ブザーや笛などの防犯グッズを持たせにくいことから被害者になりやすい反面、証言能力を疑われるような経験をしていれば申告自体をためらう可能性もある。

被害防止には、まず実態を受け止めることが大切だ。とりわけ他の子供に埋もれがちな通常学級では、子供が申告しやすい工夫が必要になる。

また、全ての子供たちに申告してほしい行為や内容を事前に伝えておいたり、周囲に知られずに担任に伝える方法を教えておいたりすると安心につながる。防犯指導においても、場面に応じて一人一人の障壁や困難を取り除き、変更を加えるなどの柔軟な調整が必要になるだろう。

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