【こども哲学(9)】幼児教育における哲学対話

NPO法人こども哲学・おとな哲学 アーダコーダ
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今回は、幼稚園、保育所、認定こども園での教育・保育(以下「幼児教育」)において「哲学対話」がどのように位置付くのか述べる。

従来から幼児教育では「環境を通しての保育」を基本としている。小学校での教育のように国語や算数など教科ごとの教科書を用いて、日々決まった時間割に沿って学習するのではなく、園のあらゆる環境の中で遊びや生活を通して多様な体験をし、そこから学ぶものである。

周知の通り、2017年3月に幼稚園教育要領、保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領の3つが同時に改訂(告示)された。これに伴い、子どもたちが日々、園での遊びや生活を通してどのような体験をし、どのような育ちが芽生え、また育っているのかを保育者が見取るときの視点が示された。

それが以下に示す「幼児期の終わりまでに育ってほしい」10の姿である。①健康な心と体②自立心③協同性④道徳性・規範意識の芽生え⑤社会生活との関わり⑥思考力の芽生え⑦自然との関わり・生命尊重⑧数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚⑨言葉による伝え合い⑩豊かな感性と表現。

これにより、今まで以上に「何ができるようになるのか」という結果だけではなく、「どのように学ぶのか」というプロセスの重要性が強調されるようになった。

筆者は、「哲学対話」は人が何かを学ぶときのプロセス、すなわち「どのように学ぶのか」の一助となると考えている。哲学対話では、はじめに問いを立てることが鍵となる。

問いと言うと難しい印象があるかもしれないが、幼児は日々の遊びや生活の中でたくさんの問いを投げ掛けている。「仲間に入るとき、どうして『入ーれーてー』って言うの?」「どうして夜は暗いの?」などだ。10の姿のいずれにおいても関連のある問いが出てくるだろう。

ただし、問いに対する正解を教えることが哲学対話の狙いではない。子どもが「なぜ?」について考える過程に寄り添い、一緒に考えることを大切にするものである。

幼児が「今、ここ」で起こっている事象に関心を示しやすい点を考慮し、保育者はその様子を見逃さないように捉え、細やかなつぶやきを丁寧にすくい上げながら、「なぜそう思ったの?」と言葉を掛け、短いやりとりをつなげる。その積み重ねが大切だ。

また、大人のように輪になって対話するなどの形にこだわる必要はない。まずはやりとりを楽しむ習慣をつくることが、哲学対話の第一歩である。

(アーダコーダ理事 東京大学Cedep 特任助教 天野 美和子)

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