【学校安全のリデザイン(9)】見守り空白地帯の1人区間対策

日本こどもの安全教育総合研究所理事長 宮田 美恵子
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子供を狙った略取誘拐はこの10年微増傾向にあり、重大な事件もいまだ後を絶たない。対策の1つである見守り活動は、学区域の子供全体に目を向けることによって、犯罪の抑止に一定の成果を上げてきた。

しかし限られた人数のボランティアで活動する中、「見守りの空白地帯」が生じている。児童は集団や複数で下校しても、友達と別れれば最後は一人になる。警察庁によると、この分岐点から自宅までのわずかな距離や時間の中での被害が3割を超えるという。

犯罪の発生状況を示した理論「ルーティン・アクティビティ・セオリー」では、犯罪発生条件の1つである「監視者の不在」、すなわち人目がない状況下で犯罪発生の確率が高まる点を指摘している。これに基づけば、子供が集団から離れた「1人区間」に見守りの目をつくる工夫や子供への指導が極めて重要になる。

この課題への対策として『わたしの空白マップ』作りを紹介したい。埼玉県の小学4年生「総合的な学習の時間」で実践した内容を例にとろう。

主な流れは①家庭で保護者と子供が一緒に1人区間を把握②学校で見守りの空白地帯を集約・共有③学校で子供が空白マップ作り④学校で地域や近所の人に空白マップを公開⑤保護者が地域に依頼⑥空白地帯への見守りの目を設置――だ。

この学習には、一部地域住民による組織活動といった量的な取り組みから、それぞれの子供の1人区間に注目し、見守りの空白地帯をふさぐ観点に立った、ピンポイントの質的な対応にシフトする狙いがある。

また、見守りの裾野を広げ、新たな担い手を開拓することも目的に据えている。「地域」という広い枠組みで1人区間を見守るのではなく、「ご近所」の力を借りる、というイメージである。

見守る側に大きな負担を掛けず、無理なく続けられるように、子供の帰宅時間に合わせて30分程度、自宅前に折り畳み式の椅子を置いたり、既存のベンチを利用したりする「見守りベンチ」も推奨している。

わが子の1人区間に関する取り組みであるだけに保護者の積極的な参加と、子供が近所の人とあいさつを交わすなど、コミュニケーションの活性化も期待できる。

本実践を通して得たのは物理的な安全対策にとどまらない。見守られているという安心感、活動への感謝の意から、児童らには自分の安全は自分で守ろうとする意識の高まりがみられた。保護者の意識が変わったように感じられた点も収穫であった。

『わたしの空白マップ』は、危険箇所の見分け方を学ぶ安全マップの手法や、過去に起こった事件事故の場所を示す危険マップの手法とも視点が異なる。それぞれの利点を最大限に生かすため、あえて組み合わせたりせずに、目的に合わせたマップを選択、活用することが重要である。

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