【学校安全のリデザイン(10)】岐路に立つ学校安全

日本こどもの安全教育総合研究所理事長 宮田 美恵子
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19年11月、大阪府の小学6年生が誘拐される事件が発生した。見つかったのは自宅から直線距離で約430キロ離れた栃木県。関西に住む小6女児と、犯人である関東の35歳男、交わるはずのない2人に接点ができるネットの特性が際立った。

この事件は、いつでも、どこでも、誰もが被害者になり得る現代の側面を突きつけた。事実、SNSに起因する事犯の被害児童数も増加傾向にある。

大阪府は18年に「安全安心の体制を補完する役割を果たせる」として学校内へのスマホ持ち込みを事実上容認する方針を発表した。だがその前に、家庭や学校でのスマホに対する教育や対策は十分だろうか。

子供たちは複雑化、進化する機能・性能を柔軟に使いこなしているが、保護者や教員といった周囲の大人が理解できる範囲で制限を設ける必要はないだろうか。

学校では「自分たちにはどこまでの機能が必要か、どんな場面で役立ち、どんな危険が生じるのか」を子供ら自身に議論させた上で決まりを作らせることを勧める。少なくともスマホを持たせる前に、次の基礎知識は大人と子供で共有しておいてほしい。

①SNSだけでの知り合いとは外で会わない。ネット上の知り合いだと理解し、やり取りを始める際は、外で会わない約束に応じてくれる人に限定する
②SNSは自分と相手の「1対1」でなく、「1対世界中の人」であるとイメージできるようにし、世界中の誰に見られてもよい写真、知られてもよい情報だけを発信する
③やり取りしている相手を友達だと思っていても、実態は架空の人、つまり偽の人物を装っている場合があることを踏まえる

安全教育で育てたい危険予測能力とは、目の前に見えない危険を想像できる力である。だが現代では、これまでの知識や常識が通用しない局面も増えている。まだ見ぬものに備える心構えも必要だ。

19年に起きた川崎スクールバス襲撃事件を契機に、子供の安全対策はさらに高いステージに上げられた。新たなステージでは、通学路における見守り活動の抜本的な改革、安全教育体制の整備が求められており、役割負担を軽減し分担する方策や、家庭・地域・学校の連携を機能させるために何が必要か、議論が待たれる。当然、SNSなどの活用、ネットリテラシー教育も重要だ。

キーポイントは、それぞれの「専門性」に根差すことだと考えている。果たして防犯教育は誰がどう担うのか、見守り活動の体制はどのようにするのか。教員や保護者の負担、地域住民の高齢化や少子化、さらにネットなどの影響で社会が大きく変わる中、学校安全は岐路に立たされている。

(おわり)

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