【日米の学校(2)】「へえ、休んでいるのかと思った」

東京学芸大学附属国際中等教育学校副校長 雨宮 真一
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私が2011年から3年間派遣されていたワシントン日本語学校は、在外教育施設の補習授業校という分類で、全日制の日本人学校と違い土曜日だけ開校する。

現在、世界52カ国と1地域にある補習授業校205校のうち、1958年に設置されたこの学校は最も古い歴史を持つ。日本大使館内の一室で、教員2人と児童29人から始まったそうだが、現在は幼稚部から高等部まで、児童生徒数が730人を超える大規模校になった。

土曜日だけの学校と聞いて疑問に思う人もいるだろう。英語教師だった私は教頭として赴任したものの、派遣されるまでどのような仕事が待っているのか想像がつかなかった。

授業は全て現地で採用された非常勤講師が行っている。この現地採用の教師が多様で、非常に熱心な人ばかりだった。平日は日本語教師など、教育に携わる人も多いが、中にはスクールバスの運転手や料理人もいる。だから授業の切り口もさまざまで面白い。最先端医療の研究者から数学を教わるなんていう、うらやましい体験もできる。

こんな学校だから、教頭は楽をしていると思われがちだ。授業中に校舎を見回っていると「教頭先生は普段何をしているのですか」としばしば保護者に尋ねられたものだ。平日は事務局で学校の準備をしていると答えると「へえ、休んでいるのかと思った」と言われてしまう。遊びに来てるんじゃないよ。

校長と教頭以外の教員が全員、非常勤講師である学校を想像してほしい。職員会議では、教頭が全ての議題を提案し司会を兼ねる。運動会など学校行事の企画運営、「お便り」の作成、指導案のチェックや研修会に加え、初任者研修も担当する。日本からは調査依頼が絶えないし、児童生徒の在籍数がひんぱんに変わるため、名簿は毎週更新しなければならない。

生活指導は対応スピードが命だが、家庭にはさまざまな文化のいろいろな考え方を持つ保護者が控えているので、慎重に行う必要がある。平日は事務局に訪れる教師と一緒に授業計画を練るから、小学校と中学校の教科書は全て読み込んだ。

肉体労働もある。自前の校舎を持たず、現地校を土曜日だけ借用しているため、授業の教材や教具は金曜の夜に車に詰め込み、土曜早朝に校舎に運び込む。小学1年生全員分の粘土を運んでいて、ぎっくり腰になったこともある。

土曜日は楽しみだ。登校時間には校舎の入り口で子供たちや送迎の家族と元気にあいさつを交わす。いつもはめったに日本人に会わないのに、この街にこれだけ日本人がいたんだと思うとうれしい。教室から漏れてくる子供たちの声はいつも元気いっぱいだ。

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