【シティズンシップ教育の可能性(1)】シティズンシップ教育を捉える枠組み

日本シティズンシップ教育学会
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近年、世界各地で、新しい世紀を支える市民を育成するためのシティズンシップ教育が構想・展開されている。

日本でも、18歳選挙権の導入や成年年齢の引き下げなどを受けて、シティズンシップ、あるいはシティズンシップ教育という言葉をよく耳にするようになった。その名を冠した学会(日本シティズンシップ教育学会)も昨年末に誕生した。

一方で内容について「どのようなものなのか」という疑問の声もよく聞く。そこで本連載では、日本シティズンシップ教育学会の設立に携わった人たちに、何を目的に、どのような内容をどのように学ぶ教育なのか、主に学校教育を中心に、時にその範囲を広げながら、オムニバス形式で語ってもらおうと思う。

連載を始めるに当たって、まずシティズンシップ教育についてゆるやかに定義しておこう。一言で言うと「参加型の、民主主義社会を支える構成員としての市民に求められる資質や能力を身に付ける教育」である。

とはいえ、ここで言う資質や能力(知識やスキル、意識など)が何かについては、多様な見方・考え方があり、正解はない。そもそもシティズンシップそのものが、形式的な権利と義務を重視する考え方から、実質的な参加とアイデンティティーを重視する考え方へ重心を移しつつあると言われている。

このことが分かりにくさにもつながっているのだが、見方を変えると、その多様性・可塑性こそが、シティズンシップ教育の特徴でもある。

日本のシティズンシップ教育黎明(れいめい)期における草分け的な文書として、経産省が2006年に公表した「シティズンシップ教育宣言」がある。同宣言は、シティズンシップが発揮される分野として「公的・共同的な活動」「政治活動」「経済活動」の3つを挙げるとともに、シティズンシップ教育プログラムを「学習の形態」と「学習の場」の2つの側面から整理した。

シティズンシップ教育の枠組み

学習の形態においては、定型的な教育から非定型的な教育、さらにその実践・参加へ、学習の場においては、公的な正規の学校教育から学校以外で行われる教育へと広げることが方向性として望ましいと提起した。

ちなみに筆者は、シティズンシップ教育を特徴付ける視点を2つに絞り、シティズンシップ教育を捉える枠組みとして図のように整理した。これから展開される個々の議論が、この枠組みの中のどこに位置付くのか、その時々において参照してもらえるとありがたい。

【プロフィール】

水山光春(みずやま・みつはる) 青山学院大学特任教授・京都教育大学名誉教授、日本シティズンシップ教育学会会長。専門は社会科教育、環境教育、市民性教育。2020年4月から京都橘大学発達教育学部教授に着任予定。

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