【日米の学校(4)】「ロケットはもういらなくなる」

東京学芸大学附属国際中等教育学校副校長 雨宮 真一
この連載の一覧

日本の学校と補習授業校で校内の様子が全く異なって見えるのは、保護者の姿が1日中あちこちにあるからだろう。子供たちは皆、親が運転する車に乗って登下校する。高速道路を使い片道3時間以上かけて送迎している家庭もある。子供たちを教室に送り届けた後は、学校が親同士の貴重な情報交換の場となるから、授業中の廊下やカフェテリアは小さな日本社会となり、活気がある。

保護者はなにも1日中おしゃべりに興じているわけではない。学校運営にも協力しているのだ。図書室の本の貸し出し、授業プリントの印刷など内容はさまざまだ。そもそもこの学校の設置者は保護者であり、日本でいうPTA役員が運営委員会を組織している。学校において派遣教員は教育的助言者という立場だ。

保護者と話をするのは楽しい。あるとき教室を巡回していると、廊下にセキュリティー係のオレンジ色のベストを着て座っている父親と目が合った。

彼は研究所で、カーボンナノチューブを限りなく細く強く作る研究をしているという。「その素材を使って人工衛星と地球をつなぎます。そうすればロケットはもういらなくなるんです」と説明してくれた。面白い方だと思っていたら、数年後新聞で宇宙エレベーター構想の記事を読んでのけぞった。本当だったんだ。

別の保護者は「360度評価」を教えてくれた。会社の人事で社員の昇進を検討する際、上司、同僚、部下、顧客から詳細に聞き取りレポートを作成するという。その人物をあらゆる角度から評価するのだ。

この考え方は学校でも役に立つ。生徒を担任の視点だけでなく、他教科の教師、同学年の友人、先輩後輩から得た情報を通して多角的に見るとよい。保護者からは小学校時代、兄弟や祖父母との付き合い方、習い事での様子などを聞けると、その生徒がより立体的に見えてくる。

では自分はどうか。「授業では」「部活指導では」「保護者からは」「職員室では」「家庭では」どう見られているのか360度自己評価をしてみよう――。しばし悄然(しょうぜん)としてうつむく。

「1分間エレベーター」というのもある。会社のエレベーターで上司と乗り合わせたとする。上司が「最近どう?」と尋ねる。あなたは上司が降りるまでの約1分間で、最近の情勢と考察をまとめて話さなくてはならない。失敗はできない。この活動は授業の最後に生徒の理解度を確認するのに最適だ。日常的に行えば、ポイントをまとめて表現する習慣がつく。

保護者と話しているとさまざまな発見がある。学校はこの豊かな人材に頼ることで、より広く深い教育ができる。

この連載の一覧

あなたへのお薦め

 
特集