【自己肯定感を育む11の方法(10)】コミュニケーション力があるか

MP人間科学研究所代表/心理学博士 榎本 博明
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学生たちには、対人不安の強い者が非常に多い。授業で対人不安について話すと、いつもやる気のない学生さえ熱心に聴き入り、「まるで自分のことを言われているみたいだった」「自分だけじゃないと分かって安心した」などと話しに来る。

そこで『「対人不安」って何だろう?―友だちづきあいに疲れる心理』(筑摩書房)という本を書いた。内容の一部を紹介しよう。

中学校や高校時代からずっと悩まされていたのは対人不安だった、という者は非常に多い。

対人不安とは、自分が他者の目にどのように映っているか、映ると予想されるかを巡る葛藤により生じる不安をいう。

具体的には「自分の話なんてつまらないんじゃないか」「場違いなことを言ってしまわないか」「変なヤツと思われるんじゃないか」「自分と一緒にいても楽しくないんじゃないか」などといった不安である。

このような不安の強さが自己肯定感の低さにつながっているというのは、十分考えられることである。特に間柄の文化を生きる私たち日本人の場合、人間関係における自信の有無が自己肯定感を大きく左右すると考えられるため、コミュニケーション力を高め、対人不安を少しでも和らげることが大切である。

今の子どもや若者の間では、コミュニケーション力は笑いを取る能力、面白く話せる能力と受け取られている。だが、誰もが話し上手になれるわけではないし、そのような能力だけで人からの信頼や評価が得られるわけでもない。コミュニケーション力をもっと広い意味で捉えておく必要がある。

私は、コミュニケーション力の心理尺度の開発に際して、次の6つの因子を抽出した。

①社交力…慣れない相手に対しても気後れせず、場にふさわしい会話ができる性質
②自己開示力…自己防衛的に身構えず、率直に自分をさらけ出す性質
③自己主張力…自分の考えを理路整然と表現し、相手に説得的に働き掛けることができる性質
④感情表現力…自分の気持ちをうまく表現し、相手の気持ちに訴えることができる性質
⑤他者理解力…周囲の人に関心を持ち、相手の気持ちや考えをくみ取ることができる性質
⑥傾聴力…相手の言葉にじっくり耳を傾け、相手の自己開示を引き出す性質

対人不安を少しでも和らげ、自己肯定感を高めるためにも、このようなコミュニケーション力を身に付けられるような指導を心掛けたい。

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