【日米の学校(12)】教師はもう孤独ではない

東京学芸大学附属国際中等教育学校副校長 雨宮 真一
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まだ空も薄暗い朝早く、現地校の借用校舎の鍵を持って静まり返った廊下を歩く。荷物を全て運び、職員朝会の資料を並べ、各教室を確認し終える頃、現地採用の教師が次々と到着する。補習授業校の授業がある土曜日の光景だ。

教師は皆、大きなキャリーケースを携えている。その中には、1日分の教材と目を通してきた子供たちの課題などがぎっしり詰まっている。足早に各教室へ向かい、授業準備を始める。やがて子供たちが登校して授業が始まると、1日はジェットコースターのように過ぎてしまう。

子供が下校すると、教科間、学年担任同士の振り返りや打ち合わせもそこそこに、教室を手早く原状復帰する。契約した時刻までに校舎を空けなければならないためで、最後は秒単位の行動となる。

補習授業校の教師には時間がない。会議や研修会は年に数回行っているし、研究授業も年に一度は実施しているものの、決して十分とは言えない。派遣教員からの助言にも限界がある。

特に、初任者や教員免許を持っていない教師にとって、授業準備や評価は不安材料だ。他の教師の授業を参観したり、ゆっくり話し合って活動の引き出しや授業の組み立て方の情報共有をしたりしたいのに、その機会や時間を確保するのが難しい。教室に行くといつも孤立無援だ。どの補習授業校も、こうした課題に直面している。

そこで私は、歴代の教師が作りためてきた授業プリントを「作文指導」「漢字練習」「発表指導」などに分類し、小学1年生~中学3年生まで整理して並べ、索引を付けて百科事典のようにした。そうすることで、子供たちにどんな力を付けさせたいのか、各学年のゴールが見えてくる。

さらに、一人一人の教師の授業を撮影し、授業後には授業者や生徒のインタビューも撮影した。その映像を編集して解説を付け、15分程度の教え方の「虎の巻番組」を作り、次々と動画共有サイトにアップロードしていった。

すると「隣のクラスの教師がこんなに面白い授業をしていたのか」などの感嘆の声が上がり、やってみたいからより詳しく聞いてみようと声掛けをする人が増えた。

私は現在、海外子女教育振興財団の在外教育施設応援プロジェクトAG5の研究員として、テキサス州ダラス補習授業校の教師を中心に、さまざまな教授法を紹介、実践している。現地に赴き研修会や模擬授業も行った。インターネットビデオ通話システムを利用して、世界中の補習授業校の教師とつながっている。

補習授業校の教師にとって、時間が足りない状況は今も変わらない。しかし、情報社会の発展によって状況は確実に改善してきている。教師はもう孤独ではない。

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