【新時代のリスクマネジメント(1)】新型コロナウイルス感染拡大の影響

常葉大学教授 木宮 敬信
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私は、防災、防犯、交通安全など、児童生徒の安全能力の向上を目指した教育プログラムの検討を行ってきました。安全教育に関わるようになって四半世紀が過ぎましたが、この間、学校や児童生徒に関わる大きな事件や事故、災害が発生し続けてきました。その都度、新たな学校安全上の課題が明らかとなり、安全管理、安全教育両面からの対策が取られてきました。結果として、学校安全に対する意識は大きく向上してきたと感じています。

しかし、今回の新型コロナウイルスが学校に与えた影響は、これまでの事件や事故、災害とは異なる、新たな課題を突き付けました。最も大きな課題は長期にわたる休校への対応でしょう。

この原稿執筆時点(5月10日)では、全国に緊急事態宣言が発令されており、多くの地域で学校が休校となっています。年度をまたいで休校となった学校も多く、先の見通しも立たない中で、学校現場のご苦労は相当なものと推察します。

これまでインフルエンザなどの流行による学級閉鎖は多くの学校で行われてきましたが、これらは既に感染が拡大してしまったがための措置です。予防を目的とした大規模な休校措置は過去に前例がなく、学校の危機管理マニュアル(危険発生時対処要領)でも想定していなかった事態ではないでしょうか。

休校中の児童生徒への教育支援や生活面の指導、保護者との連絡、教職員のテレワーク対応など、現時点でも多くの課題に直面しているものと思われます。

また、学校再開後の感染症対策などについても、「感染症対策と教育活動の両立」「多くのストレスを抱えた児童生徒の心のケア」「家庭環境が悪化した児童生徒への対応」「教職員の業務環境の見直し」「今後の感染症流行に向けたさまざまな準備」など、検討すべき課題は山積しています。

今後の社会構造を変化させる可能性すら指摘される新型コロナウイルスの世界的流行は、学校の危機管理にも変化を与えるものとなるでしょう。このような新たな危機事象が今後も形を変えて学校に起こる可能性は否定できません。

今回の学校現場での影響などの検証にはまだ時間が必要かと思いますが、新たな危機はすぐにでも起こる可能性があります。今回の教訓を踏まえ、学校の危機管理体制を早急に見直す必要に迫られているのではないでしょうか。

本連載では、学校危機管理の基本的な考え方に倣い検証を試みるとともに、今後の学校危機管理の方向性や課題について考えてみたいと思います。地域や学校の実情により、状況は大きく異なりますが、それぞれの学校が危機管理を再考するきっかけとなれば幸いです。

【プロフィール】

木宮敬信(きみや・たかのぶ)常葉大学教育学部教授。専門は交通安全教育、防犯教育、防災教育など。文部科学省「学校の危機管理マニュアル作成の手引」や「生きる力をはぐくむ学校での安全教育」などの作成に関わる。その他、バスケットボールの指導者として、大学チームを全国レベルの強豪に育てたほか、静岡県国体チームの監督なども務める。主な著書に『スポーツ・体育と健康科学テキスト』(三恵社、共著)など。

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