【新時代のリスクマネジメント(2)】信頼関係の構築

常葉大学教授 木宮 敬信
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安全で安心できる学校づくりのための危機管理マニュアルは、学校管理下で事故等が発生した際、教職員が的確に判断し円滑な対応ができるよう教職員の役割分担を明確にし、児童生徒などの安全確保体制の確立に必要な事項をまとめ、全教職員が共通理解するために作成するものです。つまり、危機管理マニュアルに記載されている想定内の危機事象であれば、教職員全員が対応できるようになっています。

しかし、マニュアルに記載されていない想定外の危機事象の場合は、臨機応変な対応が求められます。そして、この対応を円滑に行うことが、学校における安心感の創出につながるのです。

今回の新型コロナウイルス感染拡大防止のための休校措置等において、学校や自治体の判断はさまざまでした。休校中の児童生徒への対応についても同様です。地域性や学校の実情に応じて判断された結果だと思われますが、児童生徒や保護者の受け止め方を見ると、多くの意見があるようでした。好意的な意見が見られる一方で、心配の声も多数上がっています。

この判断の是非は、現時点で判断するのは難しい状況にありますが、「児童生徒の安全が脅かされる想定外の出来事に遭遇したとしても、うちの学校の対応は安心して任せることができる」と児童生徒や保護者が感じられることが重要です。

こうした関係性の基礎となるのは、日頃の信頼関係です。学校と保護者、担任と児童生徒・保護者などの信頼関係が構築されていれば、「いつも〇〇だから、しっかり対応してくれるはず」と安心できます。しかし、真逆の関係が築かれていると、「いつも〇〇だから、今回も心配だ」となってしまいます。

当たり前ですが、こうした関係性は危機場面において、急に形成されるものではありません。普段の信頼関係が、危機場面が訪れたときに試されるとも言えるでしょう。

その意味で、今回は非常に困難なタイミングであったと思われます。年度をまたいだことにより、担任が変わっただけでなく、新入学の児童生徒にとっては、まったく未知の状態でこの危機を迎えることとなりました。異動があって十分な意思疎通ができていない教員もいただろうと思います。新しい赴任先の危機管理マニュアルを理解する時間的余裕もなかったことでしょう。

このような状況の中でも多くの学校では、オンライン授業の実施やきめ細やかな連絡体制の構築など、臨機応変にさまざまな試みを実施しています。これまでの関係性によって円滑に実施できた学校もあれば、そうでない学校もあるでしょう。共通して言えるのは、今回の取り組みは今後の信頼関係の構築に大きな意味を持つことになり、次の危機場面にも影響を与えるものになるということです。

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