【子どもアドボカシー(8)】学校におけるいじめとアドボカシー

熊本学園大学教授 堀 正嗣
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私は仲間と『子どもアドボカシー実践講座』(堀正嗣・子ども情報研究センター編、解放出版社、2013年)という本を出版した。本書ではさまざまな場面でのアドボカシーの事例を開発し、演習ができるようにしている。その中から、いじめられて不登校になった子どもの事例を、一部改変して紹介する。

「1学期、綾香さんはクラスメートの和美さんから同意を求められたことに『私は、そうは思わない』と言ったことをきっかけに、靴を隠されたり、教科書をぐちゃぐちゃにされたり、ビンタされたり、肩を押されたりするようになりました。2学期になると、ビンタされたりすることはなくなったものの、陰で悪口を言われるようになりました。クラスの多数の人から、陰湿ないじめを受けていると感じ、次第に学校に行けなくなりました。」

あなたが学校の教職員や独立アドボケイトだったら、綾香さんをどのように支援するだろうか。アドボカシーの原則、実践方法を思い出しながら考えていただきたい。

「子どもアドボケイトは綾香さんの気持ちを尊重し、綾香さんが自分の思いを話せるように、綾香さんに向かって言葉を掛け、耳を傾けました。その後、面談を重ねて、綾香さんの思いをどう学校に伝えていくのか、一緒に考えていきました。綾香さんは、クラス全員に向けて、自分がつらかった思いを伝えることにしました。また、学校の会議では、まずは子どもアドボケイトに綾香さんの気持ちを代弁してほしいということになりました。」

このようにアドボケイトは、子どもの気持ちに寄り添って傾聴するとともに、子どもの意見形成を支援する。子どもの意見や願いをまとめ、伝える手伝いをするのである。綾香さんの依頼を受けて、アドボケイトは会議に同席し、口火を切る。

「綾香さんは、いじめを受けて、転校したい、引っ越したい、と思っています。クラスの多数からいじめを受けてきたので、全員が綾香さんの手紙を読んで気持ちを分かってほしいと思っています。もちろん、いじめた相手にも読んでほしいと思っています。学校に行きやすくすることが、今の綾香さんの願いではありません。綾香さんこれで間違っていませんか? 自分から話したいことはありませんか?」

子どもアドボケイトは綾香さんと同席して、綾香さんの意見や気持ちを代弁し、自分で話せるように支援している。また、周囲のおとなが綾香さんの意見を傾聴し、尊重するように働き掛けている。このような活動が、子どもアドボカシーの具体的なイメージである。

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