【子どもアドボカシー(9)】障害児のアドボカシー

熊本学園大学教授 堀 正嗣
この連載の一覧

国連・子どもの権利委員会は、「障害児が虐待の被害者となる確率は、障害のない子どもの5倍である」と指摘している。いじめに関する統計はないが、障害児が被害者になる確率は5倍よりもはるかに多いという実感がある。

障害児は権利侵害を受けやすく、声を上げることが困難であるため、最もアドボカシーが必要な子どもたちである。教職員やアドボケイトは、身体障害の子どもたちだけでなく、目に見えない知的障害、発達障害などがある子どもたちにも注意を向け、SOSを見逃さないようにする必要がある。

「子どもアドボカシーセンターOSAKA」では、2017年度から障害児施設で訪問アドボカシーを行っている。週1回2時間程度、アドボケイトが訪問して、遊びを通して信頼関係を結び、子どもの意見や願いや声に、耳を傾けているのである。

施設訪問アドボカシーでの事例を2つ紹介する。プレイルームに座っている視覚障害のあるAさんは子どもたちが近寄ってくることに不安を感じていた。髪の毛を引っ張られたりして、「やめて!」と伝えるが、幼い子どもたちはやめようとしない。

アドボケイトはこの状況を改善できないかと考え、職員に伝えてみることや、定期的に行っている会議で代弁することを提案した。Aさんは「会議で代弁してほしい」と話したので、アドボケイトは会議でAさんの気持ちを代弁した。

その結果、Aさんの周りに低い仕切りを立てることや、Aさんがくつろぐ部屋を階下に変更することになり、以前よりも安心できる環境で生活できるようになった。

2つ目の事例である。アドボケイトと一緒に外出したBさんは、やっと選んだドーナツを食べながら普段の生活についてなどたわいのないおしゃべりを続ける中で、「自分一人の部屋がなくて、同じ部屋の子に自分の持ち物を触られる。それが嫌…」と胸の内を明かしてくれた。

その思いをじっくり聴いていき、アドボケイトから職員にBさんの思いを伝えることになった。その結果、個室は無理だが、「専用の鍵付きロッカーを用意する」ということになった。Bさんは、意見を言えたことで自信を持ち、以前より安心して施設で過ごせるようになった。

たくさんのことを諦めざるを得ない経験をしてきた障害児は多い。そのために、意見や願いを表現することすら諦めている子どももいる。これは権利侵害を受けてきた子どもに共通する心理である。こうした子どもの声に真摯(しんし)に耳を傾け、代弁してくれるアドボケイトの存在は、子どもが自信や希望を取り戻す大きな力になる。

この連載の一覧

あなたへのお薦め

 
特集