【新時代のリスクマネジメント(8)】感染症対策と避難所運営

常葉大学教授 木宮 敬信
この連載の一覧

前回は、危機事象が重複した事例を紹介しました。今回はその続きとして、感染症対策と避難所運営について考えてみましょう。もちろん、避難所の管理や運営は学校の責任範囲とは言えませんが、学校再開後の教育活動との両立を考えれば、地域と一緒になって取り組むべき課題であることは明白です。

文部科学省の学校安全資料「『生きる力』をはぐくむ学校での安全教育」には、自然災害等の発生に備えた安全管理の項目で、次のような記載があります。

「学校が所在する市区町村の地域防災計画との密接な関連を図り、学校施設が地域の指定避難所に指定されている場合の対応等(使用場所についての優先順位や衛生管理にも配慮した安全管理等)についても十分に協議・検討し、対策を講じておく必要がある。」

具体的な内容についての記載はありませんが、衛生管理に配慮した安全管理について、地域と十分に協議して対策を講じておくようにとの趣旨です。

過去には、東日本大震災で避難所となった宮城県内の小学校で、インフルエンザのアウトブレイクが発生した事例もあります。この時の教訓から、断水時に備えたアルコール消毒剤の備蓄、仕切り版を使った隔離、飛沫(ひまつ)感染対策に有効な段ボールベッドの活用等が提言されました。

これらは今回の新型コロナウイルス感染症対策でも非常に有効だと考えられます。しかしながら、「避難所での感染症対策に苦慮している」といった報道の数々を見ると、その教訓が共有されていたとは言えない状況です。

通常、災害発生時には、災害リスクを重視して避難する人が多くいます。しかし、避難所で「3密」を避けるのは難しいものがあり、風水害等の事前避難については、避難勧告や避難指示が出たとしても、避難を躊躇(ちゅうちょ)する人が出てくる可能性もあります。

これまでの教訓を参考に、できる限りの対策をしておくとともに、地域住民にそれらを周知しておくことで、少しでも安心して避難できる環境を整えておくことが大切です。

そして、これらを踏まえて危機管理マニュアルや地域防災計画の見直しを行うことが重要です。避難者間を隔離することを考えると、避難所スペースが不足することもあるでしょうし、必要な物資の量についても再検討が必要です。

避難スペースとして使える教室がどこにあるのか、また、児童生徒の安全確保と両立させるためにどんな配慮が必要かなど、学校や地域の実情を踏まえ、それぞれの立場から検討していくことが求められます。

この連載の一覧

あなたへのお薦め

 
特集