株式会社博報堂H-CAMP企画推進リーダー 大木 浩士
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学習は、簡単なことから始め、段階的に難易度を上げていくやり方が効果的です。私は、話し合いの場づくりにおいても、そのような進め方を採用すべきだと考えています。
まずは簡単なものから始め、成功体験を重ねながら慣れていく。定着をさせていく。定着したら、一段階難易度を上げた取り組みにチャレンジする。このようなステップを踏むべきです。
話し合いの進行を行う際、私はよく“自転車のギア”をイメージします。
動きだす時は、ローギア(1速)からスタートをする。走りだして、ペダルが軽く感じられたらギアを1段上げる。そして最終的にトップギアに入れる。このような進め方です。
いきなりトップギアで走り始めようとすれば、ペダルが重すぎて、前に進めず倒れてしまいます。生徒同士の話し合いで、もし重い沈黙の時間が流れるようなら、それは自転車が倒れているのだと思ってください。
では、具体的に何から始めるのか。連載の第2回目にも書きましたが、年度初めは、近くの人とお互いを知り合う話し合いから始めるとよいでしょう。
人と話すことに、まずは慣れる。これがローギアだと思います。
このギアが定着し、軽く感じられたら、ギアを1段上げます。「何かを考え、その考えを人に伝える」が次のステップです。
特定の問いを生徒たちに提示するわけですが、意識したいのは「自分事化ができる問い」を立てることです。「知っているかどうか」ではなく、「自分はどうなのか」で考えられる問いにします。
例えば私が数学の先生なら、「数学の授業をどう思うか」という問いを立てるでしょう。「数学の授業は、どのくらい楽しいですか?5段階で点数をつけてみましょう。5が最高、1が最低です。その点数をつけた理由も含めて、チーム内で紹介し合ってください」このようなお題を設定します。
初めは戸惑うかもしれませんが、おそらく、話し合っている最中に笑い声が起こります。共感の声が上がり、かなり熱い話し合いになるかもしれません。
自分の考えを持つ。それを人に伝える。「考えを交換することは、結構楽しいじゃないか」、そこに導くことがセカンドギアだと思っています。
話し合った後は、どんな意見が出たのか、各チームから発表をしてもらいます。
チーム外の人たちの意見に触れることで、視野がさらに広がっていく。生徒の視野も広がるでしょうし、先生の視野も広がると思います。そして、生徒が主体的になる授業づくりのヒントが見つかることでしょう。
このような手順を経て、各科目に即した話し合いの場を設計していきます。