【新時代のリスクマネジメント(10)】新時代の危機管理

常葉大学教授 木宮 敬信
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新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、多くの人々に感染症の脅威を刷り込みました。そうした警戒心の強さから「コロナ後の社会は、これまでとは違った社会になる」と言われるほど、大きな社会的変化も予測されます。学校においても、コロナ前と後ではありようが変わってくるかもしれません。

5月22日に文部科学省は、衛生管理マニュアル「学校の新しい生活様式」をまとめ、通知しました。このマニュアルでは、生活圏における感染症のまん延状況によって3つの段階に分けて、学校の行動基準を示しています。教育活動や安全管理上の留意点について、非常に細かく例示されており、今後はこのマニュアルに沿って、各学校が教育活動を進めていくことになります。

学校規模や地域の状況によっては、マニュアルに沿った実施が難しいケースもあるかもしれませんが、できる限りの対応で感染リスクを下げることで、ウイルスと共存していく体制づくりが見えてくるのではないかと思います。

同時に、この「学校の新しい生活様式」と既存の学校安全計画や危機管理マニュアルが両立できるかどうか点検・見直しをしていくこと、また、それに伴って必要な物資などを用意しておくことが求められます。

今回の学校再開時においては、十分に検討する時間的余裕がなかったかもしれません。しかし、学校や地域の実情を踏まえ、早急に検討していくことが求められます。また、「学校再開に伴う感染症対策・学習保障等に係る支援経費」として補正予算が組まれました。

まずは直接的な感染症対策に使用されることと思いますが、それによって生じる他のリスクを軽減する取り組みなども同時に検討するなどして、限られた予算を効果的に使いたいものです。

10回の連載を通じて、新型コロナウイルス感染症を題材として、学校の危機管理について考えてきました。学校安全は考え出せばきりがなく、迷路に迷い込んだような気持ちになることもあります。学校現場での苦労は、想像に難くありません。リスクを考えすぎるあまり、「〇〇すると△△になるぞ」などと、児童生徒に対して脅すような指導になってしまうこともあるでしょう。

しかし、「危険を教える」のではなく、「安全を教える」のが安全教育の基本であり、これが安心感の創出につながります。学校や一人一人の教師が眼前の課題と真摯(しんし)に向き合い、高い意識を持って取り組むことによって、安全で安心できる学校が実現できるのではないでしょうか。

(おわり)

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