【スクールソーシャルワーク(4)】SSWのミクロレベルとその特徴 社会性の原理、現実性の原理

大阪府立大学教授 山野 則子
この連載の一覧

前回は、スクールカウンセラー(SC)や教育相談員との差異でもある、スクールソーシャルワーカー(SSWer)の価値や全体像について概観した。スクールソーシャルワーク(SSW)の対象は、ミクロ、メゾ、マクロのレベルがある。今回はミクロレベルの活動を紹介する。

児童虐待事例から検討してみる。児童虐待の当事者が「私は虐待しています」と相談に来ることはほとんどない。事実を隠そうとするがゆえに、学校関係者に対して威圧的であったり、逆に非常に丁寧だったりする。

第1回で挙げた、乳幼児と小3を連れた父子家庭の転入(野田市の事件)や卒業直前の小6の転入(川崎市の事件)など、直感的に違和感がある場合、レッテルを貼り思考停止するのではなく、まずは「あれ? 大丈夫?」と構想する(アドボケイト)ところから始まる。

前回述べたように、教師が福祉の視点を持たない場合、気になりながらも「家庭の問題だから」とふたをする結果となってしまうことが多い。しかし、小さな違和感や日常的懸念は、児童を日頃からよく知る教師であるがゆえに持ち得るものだ。だからこそ、懸念を封殺してはならない。

SSWerは、懸念を抱く教師に自ら近づいていくというアウトリーチ技法を使用する。問題意識のない当事者(図の右下の第4領域)に社会福祉の原理によってアプローチするところがSWの特徴だ。

例えば、教師から上記のような漠然とした懸念を聞いたSSWerは、まずその背景や置かれている状態を聞き、何が必要かを整理する。そして、転居前の学校、関わりのある機関(例えば、市町村児童相談部署、保育所など)から情報を得ることができないか検討を行う。

ある程度の情報収集ができたら、次に教師と共同でアセスメントを行い、できるだけ早い段階で関係機関と連携する。さらに、例えば過去に施設入所や一時保護の経験がある場合など、学校としてどのように動き、どのように気を付けるべきか児童相談所に指導を仰ぐことも考える(児童相談所は児童福祉の専門機関として、学校への助言指導を行う役割を持っている)。

そうすることで、多忙な児童相談所に事例を意識してもらうことができる。このように、学校の外部に存在する機関に対して働き掛けることが重要だ(社会性の原理)。

この際、たとえ機能していない機関があったとしても、決して敵対的にならずに働き掛けを行う。また、SSWerは、心の問題を整理する専門家ではなく、子どもの最善の利益を考え、家庭の問題と済ませず、必要に応じて現実を動かそうと(現実性の原理)、あらゆる方策を考慮して取り組む(社会福祉の4つの原理の残り2つは第3回に掲載)。

重要な点は、SSWerが学校に近い存在でないと、教師が頼ることはできないという事実である。

この連載の一覧

あなたへのお薦め

 
特集