【スクールソーシャルワーク(5)】チーム学校をつくる ①ケース会議の重要性

大阪府立大学教授 山野 則子
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スクールソーシャルワーカー(SSWer)が行う仕事の対象には、ミクロ、メゾ、マクロのレベルがある。「メゾ」のレベルでは中間サイズ、つまり学校が対象となる。家庭環境の安全安心の向上だけではなく、教育現場の安心安全の向上も含まれている点は、同じソーシャルワーカーであっても児童相談所の児童福祉司とは違うところである。

SSWerの頭の中には、子どもや家族のことだけでなく、常に学校を機能させることがある。A君の問題解決を担任とだけ共有したとしても、校内で共有しなければ、同様の問題が生じたB君、C君に生かせない。SSWerは、校内における教師の位置付けや意思決定過程にも着目し、学校全体として蓄積されるようにしていく。こうした視点は学校と違う組織の児童相談所・児童福祉司は決して持たない。心理面に着目するスクールカウンセラー(SC)とも違う点だ。

SSWerが「学校に働き掛ける」上では、どのような手法があるのだろうか。例えば、ケース会議がある。ケース会議には、「学校職員(※)がチームとして一丸となる」「違った手法を知り支援の幅が広がる」などの有用性がある。故に、問題の解決につながりやすい。

ケース会議の様子(「スクールソーシャルワーカーによるケース会議」(大阪府立大学スクールソーシャルワーク評価支援研究所作成)より引用)

本連載の第1回で述べたように、教師は個業である。自身のクラスの子どもについて同僚と話し合う機会は、ケース会議などの場がない限りない。多くの教員は同僚に時間を取らせることを気にして、自身の力不足と認識したりする。実際、福祉機関と違って学校でケース会議が定例化しているところはほとんどない。

SSWerとしての「メゾ実践」とあえて呼ぶのは、学校文化の中では、福祉の手法であるケース会議が自然には発生しないからである。こちらから働き掛けるというソーシャルワークのアウトリーチ機能を使って必要性を説明し、まずは開催にこぎつける必要がある。

事例で紹介しよう。保護司や警察や児童相談所が関わっても全くうまくいかず、50人ほどの生徒が教室に入らず校内をウロウロしている中学校があった。教育委員会も当該学校の教師も疲弊していた。

そうした状況の中、SSWerの導入を持ち掛け、ケース会議を実施した。当初、そのような手法に疑いの目を向けていた教師たちも、会議終了時にはアセスメントに使ったエコマップ(本人家族と機関の関係を表す図)を携帯カメラで撮影するほど前向きになっていた。

その後もSSWerと何度もケース会議を行い、教師たちは半信半疑ながらも、会議で決定した方向性に動いていった。なかなか改善しない重篤な事例ではあったが、3カ月後には校内をウロウロする生徒がいなくなった。

SSWerがスーパーマンだったわけではない。丁寧に計画し、情報や反応を教師に何度もフィードバックし、会議で決定した方針の下で、一丸となって行動したことが大きい。このように、SSWerはケース会議を柱に教師たちが動きをつくれるよう、見落としがちな点を埋め、学校組織を強化している。

※2017年の学校教育法施行規則の一部改正により、SSWerも学校職員に位置付けられた。

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