【プログラミング教育の勘所(1)】コロナ禍の今こそプログラミング教育を

NPO法人CANVAS理事長/一般社団法人超教育協会理事長/慶應義塾大学教授 石戸 奈々子
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社会の構造が大きく変化する中で、その変化に立ち向かいながら情報技術を使いこなし、世界中の多様な価値観の人と協働し、新しい価値を創造する力が今まで以上に必要となります。そのような考えの下、2002年にNPO法人CANVASを設立し、プログラミング教育など、子どもたちの創造力とコミュニケーション力を育む活動を産官学連携で推進してきました。

プログラミングに取り組む子どもたちの変化には、度々驚かされてきました。協働して創造する力、試行錯誤しながら楽しく主体的に学習する態度、自らの持つ力を社会課題解決に活用しようとする姿勢が、育まれていくのです。プログラミングとは、コンピュータを操作するスキルだけではなく、こうした力や姿勢をも育むものなのです。

新型コロナウイルスは、私たちの生活の隅々まで大きな影響を及ぼしました。日本も2020年度内に学習者用のPC「1人1台」の配備が進むことになりました。前倒しでの環境整備は、今年度から必修化されたプログラミング教育にとっても朗報です。その一方、感染予防対策や学習の遅れの取り戻しで現場は手いっぱいであり、プログラミング教育は二の次であるとの声も聞こえてきます。

しかし、今こそ取り組んでいただきたい。なぜなら未曽有の緊急事態に立ち向かう術を学び、子どもたちをエンパワーしてくれるのがプログラミング教育だからです。

今、世界中の人が極めて困難な世界共通の課題に立ち向かっています。国家による強制と市民の権限のバランスはどうあるべきか。感染症対策と経済活動のバランスをどう取るべきか。医療崩壊を防ぐために何をすべきか。誰も答えが分からない中、多くの専門家が知恵を出し合い、対策を講じています。

大きな経済的ダメージを負う一方で、創意工夫による新たなビジネス形態も生み出されています。遠隔でセッションをするオーケストラ、オンラインで制作した遠隔テレビドラマ、オンライン鑑賞の機会を提供する美術館。自宅にこもる日々の中でも新しい楽しみ方を見いだす試みも多く目にしました。

コロナ禍で求められたことは何か。それは、世界中の人と協働し正解がない問いを解決する力、新しい生活に適応し楽しむ姿勢、試行錯誤しながらも挑戦する心、新しい社会を創造する力。それはまさしく、プログラミング学習を通じて子どもたちに育まれる力そのものです。

全ての分野が今まで以上に迅速にDX対応を迫られ、新しい生活様式の構築に動いています。それら新しい社会を築いていくのは、幼少期から当たり前のリテラシーとしてプログラミングを身に付けた今の子どもたちの世代ではないでしょうか。

【プロフィール】

石戸奈々子(いしど・ななこ) 東京大学工学部卒業後、マサチューセッツ工科大学メディアラボ客員研究員を経て、 NPO法人CANVAS、株式会社デジタルえほん、一般社団法人超教育協会等を設立、代表に就任。慶應義塾大学教授。 総務省情報通信審議会委員など省庁の委員多数。NHK中央放送番組審議会委員、デジタルサイネージコンソーシアム理事等を兼任。政策・メディア博士。 主な著書に『プログラミング教育ってなに? 親が知りたい45のギモン』(ジャムハウス)、『子どもの創造力スイッチ!』(フィルムアート社)、監修に『マンガでなるほど! 親子で学ぶ プログラミング教育』(インプレス)など。デジタルえほん作家&一児の母としても奮闘中。

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