【スクールソーシャルワーク(6)】チーム学校をつくる ②スクリーニング会議の重要性

大阪府立大学教授 山野 則子
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児童虐待を起こした保護者の執拗(しつよう)な要求に、担任教師が翻弄(ほんろう)されて過労死に至り、そのご家族が公務災害を要求した裁判に関わったことがある。教育に熱い思いを持った優しい教師だったという。子どものことを思うが故に、理不尽な要求、頻繁にかかる電話などに苦しめられたのだった。

1990年代、筆者が「教師へのメッセージ:ひとりでかかえこまないで」というキャッチフレーズの下で活動していたころの出来事である。ご家族は、筆者の主張する連携やチームが学校内にできていれば、状況は変わっていたかもしれないと話されていた。

係員・係長・課長・所長などのライン構造の下で動き、リスク時には複数で対応する福祉とは、学校の組織体制は違う。無理にでも形を作らなければ、教師も子どもも守れない。そんな思いの下で作られた形の一つが「スクリーニング会議」である。

「スクリーニング」には、「集団を対象」「素早く実施可能」「無自覚な対象」「暫定的に識別」「早期発見」「簡便」などの特徴があると言われ、「アセスメント」とは異なる。

スクリーニングから学校での対応・支援につなぐプロセス(出典・文部科学省発行・大阪府立大学山野則子研究室協力(2020)「スクリーニング活用ガイド(概要版)」)

学校でのスクリーニングに特化して定義すると、「子どもの最善の利益のために、全ての子どもを対象として問題の未然防止のために、データに基づいて、潜在的に支援の必要な子どもや家庭を適切な支援につなぐための迅速な識別」である。SSWerがマクロの視点から全体像を考えた上で、その構造化を図ろうとするメゾアプローチと言える。

ケース会議が事例に特化した手法であるのに対し、スクリーニングは集団へのアプローチであり、ライン構造に代わるものとなる。ライン構造の大事な点は、ヒエラルキーではなく、「組織で情報を共有し、意思決定を行う仕組み」である。

具体的な進め方としては、まず子どもの問題の早期発見・未然防止を懸念する教師と共にスクリーニング会議の開催を企画し、学校全体で合意を得る。実施となれば、各教師がシートの項目にチェックを入れ、その内容を学年会議で共有する。

「スクリーニングシート(YOSS)」は、学習面、健康面、家庭面などバラバラに把握されていたものを一括して把握でき、かつ次の動きにつながるように開発されたものである。重要なのは、安易に校内チーム会議に挙げるのではなく、学校職員の関与、地域資源の活用、専門機関に紹介といった形で、方向性を暫定的に決めることである。

例えば、宿題を全く持ってこない子どもがいた場合、その一点を見るのではなく、健康面、家庭面などシートから総括的に確認することである。そうすることで、思わぬ発見が生まれたり、複数人で話す中でワンポイント助言が出てきたりする。

つまり「情報を共有し、意思決定を行う仕組み」ができることで、教師の抱え込みを防ぎ、子どもの問題の早期発見を促し、児童虐待やいじめなどの事件の重大化を防ぐ一策になるのである。

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