【Withコロナ時代の体づくり(3)】創り出された新たなスポーツコミュニティー

東京学芸大学准教授 鈴木 直樹
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運動・スポーツは、子供たちの習い事として大人気です。しかし、コロナ禍において外出自粛になると、そういった機会も持ちにくくなっていきました。今回は、このような中で取り組まれた2つの実践を紹介したいと思います。

菊地朋枝さんは現在、加圧トレーニングを指導するトレーナー。小学5年生から空手を始め、全国大会でも入賞をするようなアスリートです。大学卒業後は、選手としてだけではなく、指導者としても活躍しています。コロナ禍で道場での指導ができなくなったことを受け、オンラインでの空手指導をスタートさせました。

菊地さんのオンラインでの空手指導

対面では、直接体に触れて骨格を調整したりできますが、オンラインではそれができません。そのため、受講生にポイントを伝え、自分自身で試行錯誤しながら調整をしてもらう必要があります。その分、言葉掛けも普段以上に考えるようになりました。

その結果、受講生も指導者任せではなく、自分で考えながら動くようになり、より深い思考ができ、自分でその変化を実感することができたそうです。

オンラインの指導では道場に通う時間がかからず、どこからでも参加できます。そのため、海外からの参加希望者も現れ、参加者は「オンライン指導を受けて深い学びができた」と、菊地さんへのお礼のメールで語っています。

また、ランニングコーチとしてさまざまなイベントや教室を企画している細野史晃さんは、仕事としてのコーチングの機会が奪われたため、オンラインレッスンをスタートさせました。

オンラインレッスンでは、小さな動きで思考しながら動く、感覚的なトレーニングになるように仕掛けを工夫していました。具体的には、地味な筋トレなどに自分や仲間との競い合いのゲーム要素を入れることで、疲れるけど楽しくトレーニングできて、走力が高まるようなプログラムを作りました。

結果としてフォームが安定し、走り方が改善した参加者が増えたそうです。オンラインレッスンでは、一緒に参加しているメンバー同士の過剰な関与がないため、いつもは注意散漫気味な子供が想像以上に集中力を発揮し、細野さんは驚いていました。周囲から「できない」とレッテルを貼られることもないので、走ることに劣等感がある子供がいつもより楽しくトレーニングしている姿も印象的だったそうです。

これら2つの実践を見ても分かるように、オンラインのスポーツ指導では、より深い思考に基づいた活動になりやすく、相手と比べ合うことなく自己評価することができ、自分のペースで活動に取り組みやすいという利点もあります。

このように、これまでとは異なるコミュニケーションによって構成される新たなスポーツコミュニティーが創造される可能性を感じています。

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