【プログラミング教育の勘所(3)】コンピュータと無縁ではいられない社会

NPO法人CANVAS理事長/一般社団法人超教育協会理事長/慶應義塾大学教授 石戸 奈々子
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今後はコンピュータを使わない仕事はなくなると言っても過言ではないでしょう。農業では、作物の生育状況をコンピュータが管理し、夜間に農業機械を走行させ、ドローンで農薬をまくなどして、効率的に高品質の作物を育てることが可能となりました。

作曲もコンピュータで行われ、バンド活動でもプログラマーが活躍しています。スポーツでも、コンピュータが体の動きを解析して効果的な練習法を提示しています。弁護士も、ビジネスマンも、CGクリエーターも、マンガ家も、映画監督も同様です。

将来どのような職業に就き、どのような生活を送るにしても、コンピュータとは無縁でいられません。新しい社会をより良く生きるために、情報技術を使いこなす力は不可欠なのです。

技術革新は社会を大きく変革させると同時に、雇用環境の変化ももたらします。今の子どもたちが大人になる頃には、多くの仕事がなくなっているだろうと言われています。事務的な処理をしたりする仕事は、コンピュータに取って代わられてしまうからです。

確かに、これまでもさまざまな職業が新しい技術によって自動化され、代替されてきました。高速道路の料金所はETCが、銀行窓口の業務はATMが「担当」しています。駅の改札も全て自動化され、切符を切る人はいなくなりました。今まで人が担当していた仕事をコンピュータがこなしています。今後もその流れは変わらないでしょう。

数年前、囲碁で人間がロボットに負けたというニュースが、世界中で話題となりました。2045年には人間の力を機械が超える「シンギュラリティ」がやって来ると言われています。ますます多くの仕事が、AIに置き換わっていくことでしょう。

多くの仕事がなくなるということで、不安に感じる方もいるでしょう。産業革命の時にも機械に仕事を奪われることを危惧した人たちが、機械打ち壊し運動を起こしました。しかし、その後、私たちの生活はどうなったでしょうか。当時と比べてもとても豊かに便利になったのではないかと思います。

そして、たくさんの仕事がなくなる一方で、たくさんの新しい仕事も生まれてきました。今、世界を席巻するGoogle、Apple、Amazon、FacebookといったIT企業は、ここ数十年の間に生まれてきた会社です。

これからの時代を生きていく子どもたちには、「人間にしかできない仕事」に就く必要があるだけでなく、「今までにない仕事」を自らつくり出してゆく能力が求められているのです。

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