【プログラミング教育の勘所(5)】プログラミングで国境を越えて協働する

NPO法人CANVAS理事長/一般社団法人超教育協会理事長/慶應義塾大学教授 石戸 奈々子
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子どもたちはプログラミングでつくった作品をアップロードして、世界中の子どもたちと共有しています。お互いの作品を鑑賞し、教え合い、学び合う。友達の作品に自分のアイデアを追加して、改定して、新しい作品を生み出す。友達の作品を見て、発想を得て、新しい作品をつくる。さらには、その作品についてネット上で議論をする。

こうして子どもたちは、プログラミングで協働しながら作品をつくっています。時に国境を越えて。プログラミングがきっかけで、苦手だった英語の勉強に励み始めた子もいます。何のために学ぶのか、その動機付けができた子どもは自ら学ぶようになります。

今は「協働の時代」です。複雑化する社会構造の中で、多様化・高度化した課題に、一人の専門家の知恵ではなく、多様な分野の専門家と協働しながら対応していく力がますます求められています。また、インターネットの広がりとともに、世界中の人とつながり、世界中の人との協働が可能となりました。

これまでの学校教育では、一人の人間が個人としてできることで、評価がされていました。しかし、社会に出るとチームで取り組むことがほとんどです。お互いの専門分野・得意分野を見極め、役割分担し、補完し合いながら、問題の解決、もしくは新しい価値の創造に取り組みます。

自分ではできないことであったとしても、友達と一緒に取り組めばできるのであれば、それも「できる」ということです。他者と手を取り合い、どうやって課題に取り組んでいくかという思考の仕方をすることで、個々人の可能性も大きく広がります。

最近よく「個性が大事」と言われます。個性と協働というのは一見、反対のことのように思えますが、密接な関係があります。

個性というのは他者との関係の中で磨かれていくものです。自分らしさというのは他者を知って初めて気が付くものです。多様な背景を持った人、さまざまな考え方の人との対話を繰り返す中で、自分の得意とすることや自分の特徴を見いだし、それを磨いていくことができます。そして、個性があって初めて協働する価値が生まれることにも気が付くのです。

それはビジネスの世界も同じです。しかもその協働の相手は、異なる文化背景を持ち、多様な価値観・考え方の世界中の人たちとなるのです。その意味でも、小さい頃からプログラミングを通じて国境を越えて協働する感覚を持つことはよいことでしょう。

また、コンピュータに指示をするには、曖昧な指示では伝わりません。伝わるように明確な指示が必要です。その力は異文化の人とのコミュニケーションにも役に立つでしょう。

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