【スクールソーシャルワーク(10)】海外から学ぶ

大阪府立大学教授 山野 則子
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「気になる子どもがいても、SSWerに相談すると指導力不足に思われる」「こんな簡単なことに対応してくれるの? 教師に話が戻るのでは?」というのが教師の正直な思いだ。そして抱え込む。この状況を改善しない限り、子どもを救えない。「教師が気軽に懸念を共有し、早期につなぐことが当たり前になる」ためには、法的規定や文化をつくるしかない。

世界的ランキング指標で子どもの学力上位を維持し続けるフィンランドでは、法的に「教師には懸念を共有する権利がある」とうたわれている。前回述べたように、子どもの生活環境を整えることと学力は関連する。教師が子どものちょっとした異変などに早期に気付き、気軽に誰かに伝えることが教育的にいかに重要かを物語っている。

アメリカでは、州にもよるが、SSWerはほぼ全ての学校にいる。子どもたちへのソーシャルスキルトレーニングの授業を受け持つ場合もある。教師もSSWerも、修士課程卒業という同等のライセンスを有し、対等に議論する。さらにはサイコロジストやジョブコーチなどの専門家が複数学校に存在し、さまざまな視点で気軽に意見交換できる。

イギリスのとある学校の様子(廊下、朝食サービスなど)

イギリスでは、学校が食事、親の就労、図書などさまざまな支援の拠点になっている。廊下全面が本棚になっているなど、経済的に不利な状況にある子どもたちが家で用意されない環境を学校が提供している。朝食サービスも毎日提供される。親が職業訓練を受けられる学校も特別ではない。

アメリカもイギリスも、教師は学校の全職員の半数にすぎず(日本は約85%)、学校には多様な職種の専門家が常駐している。教師は、専門家の存在と働き、その効果と影響を身近に知ることができる。

これら海外の例には、「教師はちょっとした懸念を口にしていい・すべき」「共有の場をつくる」「さまざまな専門家やサービスを見えるようにする」など学校制度改革のヒントがある。

日本のSSWerの現状の待遇(非常勤雇用、謝金制)と関与の頻度(週1、2回)では、教師と対等な関係ができず、教師側から軽視されるか、「特別なお客さん」になってしまう。

教師が有効にSSWerを活用するには、職種としてSSWerの価値や役割を知り、ささいな懸念を早期に共有し、専門職として対等かつ違った視角を交換することが重要だ。子どもの最善の利益のために、専門性の相互承認が可能になるような制度設計、すなわちフィンランドのような法的規定、アメリカのような専門家の存在と働き、イギリスのような支援の拠点化を講じることが喫緊の課題である。

遠い話にしないために、この3点をすぐに「できること」として取り入れていただきたいと願う。

(おわり)

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