【ポストコロナと教育格差(5)】「入口」の格差

広島経済大学准教授 前馬 優策
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前回は、3密を避けた教室での学びについて、教育格差の観点から考えておきたいことを述べた。今回は、「入口」の格差について、懸念と対策を考えたい。

小学校入学時の子供たちは、他の学年にも増して、さまざまな面で違いがある。社会経済的背景(保護者の学歴・職業・収入)によってその違いが生じる限り、それは「格差」と呼んでもよいものだ。

私はかつて入学後3カ月の子供たちに、5枚の絵を見せて話をつくらせるという言語運用調査を行ったことがある。結果は、保護者がホワイトカラー職だった場合、主語や助詞の省略が少なかった。これが、学校適応や授業の理解度にも関わり、初期の格差が後の学力格差などにつながると考えられる。

このような言語格差が生じる背景には、就学前教育段階のさまざまな教育格差がある。国内外の研究が明らかにしてきたところでは、社会経済的地位の高い親は明確な教育方針の下で意図的養育を行ったり、幼稚園をじっくり選択したりする。また、子供が掛けられる言葉の量や質にも、社会経済的な格差がある。

そのような状況がある中、今回のコロナ禍で小学校入学が実質的に遅れたことで「入口」時点の格差が拡大し、ひいては最終的な教育格差が拡大してしまうことが懸念される。

休校中の小学校ではさまざまな課題を準備していたが、1年生はまだ文字や数字を習っておらず、個々の発達差も大きく、課題を出すのが非常に難しかったと聞いている。子供が一人で満足に課題をこなすのは難しく、保護者が学習環境を整えたり、逐一フィードバックをしたりする必要があっただろうが、そのやり方は家庭によってさまざまであった。中には、追加的な教材を購入して子供に与えた家庭もある。

再開後の学校で、教師は多くの手を打ちながら子供たちと一緒に過ごしているが、入学が遅れたことで格差が開いているとすれば、次年度以降を見通して教育課程を編成するなど、子供たちの学習に余裕を持たせることが重要である。休校で生活習慣が崩れ、夏休みも短縮という状況にあっては、最も厳しい状態の子供からパンクしていきかねない。

また、学力格差に対処することも大切だが、小学1年生こそ今一度、非認知能力を大切にしたい。これは想像だが、いつにも増して自分と他人とを比較して不安や劣等感を覚えてしまい、自己肯定感を下げてしまう子もいるかもしれない。

その点、非認知能力は学力形成の基盤にも成り得るし、とりわけ「入口」の格差に対処するためには、「急がば回れ」のスタンスで臨むことが求められる。

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