【プログラミング教育の勘所(8)】「1人1台」でパソコンを学校にする

NPO法人CANVAS理事長/一般社団法人超教育協会理事長/慶應義塾大学教授 石戸 奈々子
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プログラミング教育の導入に当たり、「Scratch」を使用する学校は多いことでしょう。私はかつて、Scratchが生まれたMITメディアラボで研究をしていました。

人工知能の生みの親であるマービン・ミンスキー、パーソナルコンピュータの父と呼ばれるアラン・ケイ、教育用コンピュータ言語「LOGO」開発者のシーモア・パパート。世界中の異才が集まるメディアラボは、1985年の設立以来、デジタルの未来社会に対するビジョンを世界に対して打ち出してきました。

そして、子どもとデジタルの関係を総合的に研究しているラボでもありました。その大きな成果の代表格がScratchとOLPCです。

コンピュータの教育への活用に一石を投じたのが、Scratchの原点となるパパート教授のLOGO言語と言えます。知識は外部から詰め込まれるのではなく、学習者自身が自ら構築することが重要だ。教示主義から構築主義へ。それがLOGO言語開発の背景でした。

そして、LOGOを活用した新しい学習方法を全ての子どもたちに提供するためには、全ての子どもたちにコンピュータを届けなければならない。パパートに触発されアラン・ケイの「ダイナブック構想」が生まれます。

「コンピュータに子どもをプログラムさせたいのか、子どもにプログラムさせたいのか」とパパートは問います。コンピュータを子どもたちのものにしたい。コンピュータを使ってつくりながら学習する環境を全ての子どもたちに提供したい。

つまり、プログラミング教育は学習者が主体的・創造的に学ぶツールであり、それを実現するための1人1台のパソコン環境整備なのです。

そうしてメディアラボは、2001年より100ドルパソコンプロジェクト(OLPC)を推進します。私が初めてメディアラボに足を踏み入れた年でした。その構想を朝食を取りながら聞いたときの衝撃は、今でも記憶に残っています。

1人1台100ドルのコンピュータで教育改革をするのだ。学校を建てられない地域にこそ、ネットにつながったパソコンを通じて学ぶ機会を提供するのだ。パソコンを学校にしようというわけです。

私は大いに感銘を受け、それ以降、本分野の活動にまい進しています。あれから20年、日本でもようやくプログラミング教育が必修化され、GIGAスクール構想により1人1台の端末配備が進んでいます。

「未来を予測する最善の方法はそれを発明することだ」

アラン・ケイの言葉です。今こそ全ての大人が手を取り合い、未来の教育を創造すべき時です。

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