【プログラミング教育の勘所(9)】Scratchが提供する三つの「場」

NPO法人CANVAS理事長/一般社団法人超教育協会理事長/慶應義塾大学教授 石戸 奈々子
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世界で5600万人の子どもたちが使うScratch。その開発背景を知ることが、プログラミング教育必修化の意図を理解する手掛かりになるのではないかと思います。

MITメディアラボで「Lifelong Kindergarten」チームを率いるミッチェル・レズニック教授。通称ミッチは、生涯にわたり幼稚園のように学べるようにしたいとの思想の下、Scratchを生み出しました。

Scratchはプログラミング言語ですが、その原点は構築主義に基づく主体的な学習をサポートするためのツールです。ミッチは言います。「これからの創造社会を生きるにあたり必要なことは、創造的思考者になることだ」

そして、創造的思考者になるための学びに必要なのは4つのPだと指摘します。プロジェクト(Project)、情熱(Passion)、仲間(Peers)、遊び(Play)です。

私自身は、Scratchには「創造する場」「協働する場」「学び方を学ぶ場」という3つの特徴があると捉えています。

まず、Scratchは全ての子どもたちにとっての「創造の場」です。Scratchのコンセプトに「低い床」「高い天井」「広い壁」があります。初めて取り組む人のハードルを下げる「低い床」、何度も挑戦し、より複雑なことができるようになるための「高い天井」、個々人の多様な学習の道に寛容であるための「広い壁」。全ての子どもたちが興味を持ち、夢中になれる対象や方法で創造できる場がScratchなのです。

そして、「協働の場」でもあります。子どもたちは自分がScratchでつくった作品を世界中の人と共有し、フィードバックを得ます。そして、そのコミュニティの中で、著作権や情報モラルなど幅広いICTリテラシーを学びます。国際社会、情報化社会をScratchコミュニティの中で体験するのです。

最後に、「学び方を学ぶ場」を提供しています。Scratchは、子どもたちが想像・創造・遊び・共有・振り返りという創造的学びのスパイラルに入れるよう設計されているのです。

日本では「プログラミング」という教科ができたわけではなく、各教科・科目の中にプログラミングが入ります。プログラミング「を」学ぶ以上に、プログラミング「で」学ぶことに価値があります。

プログラミングを通じて「つくりながら学ぶ」「教え合いながら学ぶ」「学び方を学ぶ」環境が構築されることを願います。

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