【ポストコロナと教育格差(10)】教育格差拡大を止める学校の在り方

広島経済大学准教授 前馬 優策
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最終回は、教育格差拡大を止める学校の在り方について述べ、締めくくることにしたい。

未曽有の危機に対して、学校はどのように対処すべきか。そのヒントとなる研究が、「東日本大震災の学力への影響」(国立大学法人東北大学、2014年)と題された報告書である。

この報告書では、津波被害後にもかかわらず学力を向上させた学校への聞き取り調査結果についてまとめられているが、そのような学校の特徴として挙げられているのは、「生活規範や学習規範の再構築」「地域や保護者の協力」「地域や保護者を安心させるファクターとしての校長のリーダーシップ」「行政と学校の連携」などである。

それらの学校では特別な学力向上策を打っていたわけではなく、驚くような取り組みを行っているとも言えない。むしろ、学校(とその外部)に備わったスペックをフルに発揮できるような環境が整えられていたかどうかに、成功の鍵が隠されているように見える。

私も携わってきた「学力格差を縮小する学校―『効果のある学校』の経年分析に向けて―」の研究でも、「気持ちのそろった教職員集団」や「戦略的で柔軟な学校運営」といった点が、いの一番にその要素として挙げられる。

もちろん、学習指導や生徒指導が機能していることも重要であるが、そのためには、学校が一つになれているかが肝となる。それによって、子供も教師も安心して学ぶことのできる環境が創り上げられるが、それは上述の「生活規範や学習規範の再構築」とも重なる。

現在、学校はコロナへの対応やICT化を進めながら、教育格差にも向き合っていかなければならない。現場はとにかく人手や財源が不足しており、差し当たり学習指導員やICT支援員が学校に入ってくる。人的資源が増強されるわけだが、彼らの活躍次第で100の資源が120にもなるし、50にもなる。

特に、教育的に不利な家庭を多く抱える学校にこそ資源配分は多くなされるべきだと私は考えるが、彼らを有効に生かすためにも、どのようなビジョン・方針の下でどのように力を発揮すればよいかが明確で、納得可能である必要がある。

この連載が終わる頃には、いつもより短い夏休みも明けている。子供たちもだが、教師も疲労を抱えているに違いない。

教職員の士気が下がれば、学校が教育格差の解消に挑むことなどできない。疲れた体にむちを打つのではなく、疲れた体の士気を下げない「コミュニケーション」と、資源配分を含めた行政サポートや制度設計が求められる。

教育格差は学校だけが頑張れば解消されるものではない。ポストコロナ時代の教育格差は、社会が一枚岩となり、危機や変化に強くて「日常」を守れる学校を創っていくことで、その解決に近づけるのではないだろうか。

(おわり)

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