【学校保健のミッション(2)】コロナ禍によるゲーム・ネット漬けと生活習慣の乱れ

埼玉大学教育学部教授 戸部 秀之
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前回、養護教諭を対象とした調査について触れました。養護教諭は学校における健康の専門家として、全校の児童生徒の心と体を支えています。元気な子、健康に課題のある子、教室に入れない子…。不調を訴える子供とはたわいもない話をしながら、背後にある要因に目を向けます。

また、保護者からの相談、担任との会話、友達との関わりなど、さまざまな情報を総合して子供の健康と発達を支援しています。アンケートでは、そうした養護教諭の視点から、コロナ禍の子供への影響を捉えようとしました。

では、子供たちにはどのような問題が生じているのでしょうか。

まず、3月から始まった一斉休校は、夏休みなどの長期休業とは全く性格の異なるものだったと認識する必要があります。それは、期間の長さだけではありません。

長期休業の場合は、社会の受け皿、交流や運動の機会、多様なイベント、季節感あふれた学習課題など、普段できないことに挑戦するチャンスがたくさんあります。学校でも長い休みに向けて、健康・生活面を含めた入念な指導が行われます。

しかし、新型コロナ対策の一斉休校では、受け皿としての社会の環境も、休み前の指導も限られ、多くの行動制限が伴いました。思わぬ自由時間に喜んだ子供もいるでしょう。しかし、外出できない、友達と会えない、混乱する大人たちと暗いニュースの中で、子供たちの中には発散できないエネルギーとストレスが徐々に蓄積していきました。

そんな中で子供たちが陥ったのが、ゲーム・ネット漬けと生活習慣の乱れです。

アンケートでは8割もの養護教諭が、それらの問題を指摘しています。時間を持て余し、エネルギーを発散できずに昼夜にわたってゲームやネットに熱中する。画面から出るブルーライトの影響もあって、睡眠のリズムが乱れる。自律神経のバランスも乱れて、午前中は元気がなく、夜になると元気が出る。多くの子供が、こうした悪循環に陥りました。

WHOが「ゲーム障害」を疾患として認定したように、ゲーム・ネットはのめり込むと専門的な治療が必要になる場合もあります。

さらに、多くの養護教諭が子供の視力低下と肥満児の増加を指摘しており、これらの問題とも無関係ではありません。学校再開とともに、生活リズムが回復することを期待していましたが、回復した子供ばかりではなく、学校再開後もゲーム・ネット漬けの状態から抜け出せない子供が少なくありません。

このような生活習慣の乱れは、知らず知らずのうちに子供たちの不安定な精神状態につながっているのです。

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