【学校保健のミッション(9)】新型コロナ対策を生きた教材にしよう

埼玉大学教育学部教授 戸部 秀之
この連載の一覧

人は誰でも、自分で決めて実行したいという欲求を持っています。新型コロナ予防においても、子供たちが自ら決めて実践する機会を持つことが大切です。小学校のある養護教諭がインフルエンザ予防のために行った次の実践は、新型コロナ対策を生きた教材にする上でも、大変参考になります。

その学校では、インフルエンザ予防のために、保健室から全校に「手洗い」の励行を呼び掛けているのですが、実施状況が芳しくありません。そこで、児童保健委員会で、子供たちに「魚の骨図」(特性要因図)を作ってみようと養護教諭が持ち掛けました。

「魚の骨図」(特性要因図)

「魚の骨図」は、課題解決を図る際、課題の原因を掘り下げていくのに有効な方法です。頭が付いた魚の骨を紙に書き、まず魚の頭の部分に課題を書きます。ここでは「手洗いをしない」です。

次に、頭から背骨となる一本線を伸ばします。次に皆で考えた「原因」を背骨の上下スペースに書き、そこから背骨に向けて矢印(骨)を書き加えていきます。子供目線で、皆で意見を出し合うのがポイントです。

ある子が「時間がないからじゃない?」と環境に目を向けました。原因「時間がない」を書き加え、矢印(骨)を書き加えます。別の子が、「それは予鈴が鳴ってからも遊んでいるからだよ」と自分たちの行動が背景にあることを指摘しました。

このように、原因の原因へと深めて、「骨」として次々に矢印を書き加えていきます。「『効果がない』って思っている子もいると思う」や「面倒なんだと思う」など、考え方に関する原因も出てきました。

さらには、「冬は水が冷たいから触りたくない」と、対応が不可能な原因も出てきました。すぐさま養護教諭が「冷たい水で洗うと、脳がシャキッとなって授業に集中できるよ」と、タイミング良く価値付けします。

「石鹸がない流しもある」に対しては、他の子から「保健委員会が石鹸の補充をしたらいい」と、解決策も出てきました。

こうして課題の原因を総合的に捉え、保健委員会の対策として、保健新聞を作って「手洗いの有効性」を全校に訴えること、校内を見回って石鹸の補充をすることを子供たち自身で決めました。

また、各クラスで保健委員が保健新聞の内容を説明すれば、「皆の役に立っている」という手応えを得ることもできます。全校のためにがんばっている委員会の活動は、他の児童にとっても励みになることでしょう。クラスだけでなく、部活動でも応用できそうです。

子供が参画し、皆で考え、意思決定して、粘り強く取り組む。新型コロナ対策を生きた教材として活用していきたいものです。

この連載の一覧