【社会をつくり出す武器としての言語活動(1)】言語から言語活動へ

自由学園男子部教諭 高野 慎太郎
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高校の新学習指導要領の新科目「論理国語」や「公共」の導入に伴って、「言語活動」が再び脚光を浴びている。人々の関心は「活動」それ自体に向きがちだが、本稿では言語活動の「文脈」に着目してみる。

言語活動に関わる文脈は「空間的文脈」と「時間的文脈」に分けられる。前者は、言語活動に関わる個人・家庭・教室・学校・社会・世界といった空間的な広がりを意味する。後者は、言語活動の前・中・後にある時間的な広がりを意味する。

言語活動と文脈の関係について、言語教育の理論と実践に即して考えてみたい。まず、「言語活動」という概念の出自から考えよう。「言語活動」概念の提案者としては、日本では西尾実、米国ではケネス・グッドマンといった言語教育学者が知られている。

両者に共通するのは、「言語生活」や「言語のプラグマティック領域」といった言葉を用いることによって、言語活動に関わる「文脈の問題」を提起してきたことだ。背景には、言語教育の領域に関する次のような3層構造の認識がある。

彼らは言語教育の領域を、①言語領域(文法・単語など)、②言語活動領域(意味を伴う討論活動など)、③言語生活領域(実生活の文脈に根付いた言語運用)の3領域に区分した。教育実践の歴史においては、①→②の順序で展開してきている。

つまり、かつては漢字の反復練習のような言語指導(①)が主流であったが、「意味を伴わない」との批判を受けたことで、討論やスピーチのような「意味を伴う言語活動」(②)に改められた。こうした展開は「言語から言語活動へ」と表現される。

しかし現在は、「脈絡なき討論」や「脈絡なきスピーチ」のような「意味は伴うが単発的な言語活動」の氾濫が、新たな課題として指摘されている。こうした状況を踏まえると、「文脈を伴わない」との批判によって、いずれ言語生活(③)が言語活動(②)を克服していくような展開が示唆される。

言語教育学者の桑原隆によれば、言語生活とは「固有の場や状況において展開される、個人的及び社会的言語活動の営み」と定義される(『月刊国語教育研究444』日本国語教育学会、2009)。「固有の場や状況」とは、本稿の言葉では「文脈」となろう。言語生活とは、固有の文脈を創発していく言語活動の在り方にほかならない。

言語活動を言語生活へとひらくための導きの糸として、本連載では「文脈の創発」に着目した言語活動の実践と、それを支える理論について俯瞰していく。

【プロフィール】

高野慎太郎(たかの・しんたろう) 1991年、埼玉県生まれ。早稲田大学教育学部卒業、同大学院修了。現在、学校法人自由学園教員(国語科)。埼玉県社会福祉審議会委員、埼玉県川越市社会福祉審議会委員、東京都東久留米市図書館協議会委員、市民団体「なくそう!子どもの貧困川越」副代表を兼任。過去に、埼玉県地域保健医療・地域医療構想協議会委員、埼玉県歴史と民俗の博物館協議会委員、早稲田大学高等学院助手(情報科)などを歴任。「社会とは、受け入れるものではなくつくり出すもの」(『社会教育』2020年5月号)ほか、雑誌寄稿、論文多数。


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