【学校保健のミッション(10)】「生きる力」につなげるコロナ禍の教育

埼玉大学教育学部教授 戸部 秀之
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10回の連載を通して、子供の心身の健康や発達、そして学びを視座に考えてきました。連載の大きなテーマにもある「学校保健のミッション」とも関連付けながら、振り返ってみましょう。

まず、全国の学校で行われた新型コロナ対策のための長期の臨時休校の中で、子供たちの心身にはどのような問題が生じ、その後も継続しているのかについて見てきました。子供たちの不安や願いにも触れました。子供の実態を明らかにして記録に残すこと、そして、子供の声に耳を傾け寄り添うことが大切です。

また、Withコロナの学校と学びについて、感染予防対策の考え方を「徹底」から「調和」を重視する考え方へとシフトしていくことの必要性を述べました。子供のより良い学びや学校の人的・物的資源との調和を図りながら感染予防対策を進めていくこと、つまり、調和を図った保健管理の考え方です。

そして、子供の継続的な予防行動を支援する「環境づくり」、新型コロナ対策を「生きた教材」にすること、「子供の参画」といった、生涯の「生きる力」につながる、今(コロナ禍)の学びの在り方について、保健教育の視点から述べました。

十分に触れることができなかった健康問題もあります。連載の中で紹介した養護教諭を対象としたアンケートによると、65%の養護教諭が子供の体力低下を問題視しています。

体力低下は、けがや熱中症の要因にもなります。50%の養護教諭が指摘している肥満児の増加は、子供の将来の健康に直結する問題です。視力の低下を指摘する声も多数あります。

「虐待のリスクが高まった児童生徒がいる」も25%に及びます。「家庭格差の拡大」(35%)、「貧困リスクの高まり」(19%)についても見過ごすことはできません。いじめ・差別・誹謗(ひぼう)中傷があったとする回答も5%あります。

いずれも学校保健を含め、家庭や地域との連携を図りながら学校教育全体で考えるべき課題です。

「学校に行く意義」に気付いた子供が多いことにも触れました。一方で、感染リスクが高まることを懸念し、登校しないことを選択する家庭や子供がいるのも事実です。学校に対する多様な捉え直し、価値観の変容があったことを理解する必要があります。

コロナ禍において、さまざまな価値観の変容や行動様式の変化がある中で、それでもなお子供たちが笑顔で学校に向かう。そのような学校教育であってほしいと、期待とエールをもって、連載の締めくくりにしたいと思います。

(おわり)

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