【学校×スマホ(1)】文科省の通知の趣旨とは

兵庫県立大学准教授、学校における携帯電話の取扱い等に関する有識者会議座長 竹内 和雄
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6月下旬、「文科省が携帯電話の学校への持ち込みを容認した」という趣旨の報道が新聞各紙でなされました。社会のICT化が進む中で、子供が学校へスマホを持っていく時代が到来するのかと思った人もいるかもしれません。

しかし、7月末に文科省が出した通知は、「小中は原則持ち込み禁止」「高校は原則校内使用制限(授業中禁止、校内使用禁止)」で、10年前の通知をほぼそのまま引き継いでいます。つまり、基本方針は変わっていません。

今回、報道機関が「持ち込み容認」と報じたのは、有識者会議の「審議のまとめ」の「中学校における、学校への生徒の携帯電話の持込みについては、持込みを原則禁止としつつも、一定の条件のもと、持込みを認めることが妥当と考えられる」という一文に着目したものだと考えています。

確かに「持込みを認めることが妥当」とはありますが、その前には「原則禁止」「一定の条件のもと」とあります。報道を聞いて、教員や保護者の中には、無条件で認められるような印象を持った人もいると思いますが、実際には自治体や学校として持ち込みを認める場合には厳しい条件が課されています。具体的には、以下の4点です。

①生徒が自らを律することができるようなルールを、学校のほか、生徒や保護者が主体的に考え、協力して作る機会を設けること
②学校における管理方法や、紛失等のトラブルが発生した場合の責任の所在が明確にされていること
③フィルタリングが保護者の責任のもとで適切に設定されていること
④携帯電話の危険性や正しい使い方に関する指導が学校及び家庭において適切に行われていること

すでに都市部では、多くの学校が「学校長等による許可制」で、携帯電話の持参を認めています。しかし、上記4条件を全てクリアした上で認めている学校はそれほど多くないはずです。そう考えれば、持ち込みのハードルは、以前より高くなったと見ることができます。

一般社会に広くデジタルデバイスが普及し、学校教育でこれを活用しようとする動きもあります。子供たちに1人1台のデジタル端末を持たせるGIGAスクール構想がその典型です。

もちろん、この流れに歯止めはかけられないし、恐らく10年後には、子供が普通に学校へスマホを持っていく時代になっているはずです。そうなっていなければ、私たちの社会は別の意味で大きな課題を抱えてしまうでしょう。

ただ、今の状態で学校がなし崩し的に持ち込みを認めれば、準備が整っていない学校では、事故やトラブルが頻発してしまう可能性が高いと思います。今回の通知は、ICT化の過渡期にある私たちの社会で、自治体や学校にきちんとした準備を促すものと考えるのが妥当だと思います。

【プロフィール】

竹内和雄(たけうち・かずお) 兵庫県立大学環境人間学部准教授(教職担当)。公立中学校で20年生徒指導主事等を担当(途中小学校兼務)。寝屋川市教委指導主事を経て2012年より現職。生徒指導を専門とし、いじめ、不登校、ネット問題、生徒会活動等を研究している。文部科学省、総務省、内閣府等で、子どもとネット問題についての委員を歴任。NHK「視点・論点」「クローズアップ現代」等にも出演。2014年ウィーン大学客員研究員。


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