【世界の学校、世界の潮流(7)】「最先端の学び」で注目されるシンガポール

Demo代表・教育ファシリテーター 武田 緑
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「最先端の学び」と、近年日本でも注目度が高まっているシンガポールの教育。現地に行って強く感じたことは、国や産業社会の要請に学校教育が機敏に応えているのだな、ということでした。資源も豊かでない小さな国であるシンガポールは、独立した時から、グローバル企業のアジア拠点としてのポジションを取ることや、IT立国、STEAM強化を標榜していました。

例えば、STEAM教育においては、国立のサイエンスセンターがリーダーシップを取り、導入の旗振りやサポートをしていますが、これはそうした国家戦略に基づいたことです。金融教育、二言語・グローバル教育、起業家教育が進んでいることにも、同じ背景があります。小さな国であることによって「小回りの利く」国家運営ができており、その中で教育は重要な位置に置かれているのです。

このように「テクノロジーに強いグローバルな人材」を育てるという明確なコンセプトの下、各学校で教育活動が進められています。

私が見学したある中学校では、数学の授業で生徒が図形を描く作業をiPadで行っていました。iPadを使うことであっという間に図形ができ、辺の長さが変わると面積も変わっていくということも体感的に理解できます。

ただ、実際には、iPadの操作だけで終わるわけではなく、鉛筆やコンパス、定規などを使ってノートに描く作業も行い、テストは紙に記述する形で行うとのことでした。iPadでの操作は、導入として取り入れられており、生徒が素早く簡単に図を描き、残りの時間をその図形の構造の理解や分析に充てることで学習効率を高めることができるのだそうです。

科学の授業は、いわゆる反転授業の形式で行われていました。生徒たちは、授業の前に各自で本を読んだり、レクチャーをタブレット端末で見たりしておき、授業では各自が事前に学習した内容を用いて、チームでディスカッションをしたり、持ち寄った課題や疑問をチームで解決したりといった流れです。

私が見た授業では、チーム学習をする際に有効な手段として「Edmodo」というアプリを使っていました。オンライン上で動画やテキストを共有できるアプリで、これを活用して意見を交換したり、その日授業で使った教材をネット上で共有したりしていました。

このように、かなり進んでいる印象を持つシンガポールの教育ですが、一方ではアジアの国らしく、集団行動や奉仕活動が重視されている側面もあります。また、多民族国家であるが故に、シンガポール人としてのアイデンティティーと一体感を国民に持たせる必要がある、という一面も持ち合わせています。また、競争の激しさや子どもたちへのプレッシャーの強さが現地でも問題視されています。

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