【世界の学校、世界の潮流(10)】「小さな学校運動」から革新学校へ

Demo代表・教育ファシリテーター 武田 緑
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韓国でも、地方の小さな学校は廃校の危機にあります。しかし、ある時からそうした小さな学校は、カリキュラムをより自由に編成してよいということになり、そこから「小さな学校運動」が広がっていきました。

子どもたちのペースや関心に合わせて、自主的・主体的かつ、対話的・協働的な学びを中心にする。子どもや保護者の声に耳を傾けながら、学校運営自体を民主的に行う。そういった形で小さい学校のメリットを生かし、よりリベラルな教育を進めようというものです。

現在、「小さな学校運動」の教育実践は「革新学校」として、より明確に学校教育制度の中に位置付けられるようになりました。これは、代案学校の公立版、あるいは公立学校のオルタナティブ化とも言えるものです。2018年の教育監(教育庁の代表者)選挙では、17ある地方自治体のうち、15の自治体でリベラル派の教育監が選ばれました。彼らが今、最も熱心に取り組んでいることの一つが、革新学校の実践を深化し、広めることです。

公立学校の枠組みの中で、内側からそういった変革を起こしていこうという「小さな学校運動」「革新学校」の起点となったのが、南漢山(ナムハンサン)小学校です。地域に暮らす子どもの数が減ったことで廃校の危機にあったこの学校は、01年から「競争や成果主義ではない学校、子どもたちが幸せに暮らせる学校を目指そう」という方針に大きく転換したことで、学校を存続させることに成功しました。地域外から、この学校に通わせたくて、引っ越してくる人たちが現れたのです。

教師、地域、保護者の間で、「自律」「経験」「協力」「進歩(リベラルの意)」「生徒中心」など重視する価値観を共有し、行事や施設やプログラムに、子どもたちの意見を取り入れることが重視されています。また、授業は講義よりも活動的な内容が多く、机はコの字型に並んでいました(これは佐藤学さんの「学びの共同体」の影響)。

時間割は、韓国で一般的な40分授業・10分休み・40分授業ではなく、80分授業・30分休み・80分授業という設定でした。さらに、長い期間を取り、あるテーマや教科を集中的に学ぶ「エポック授業」という学び方も取り入れているとのことでした(これは、シュタイナー教育の影響だと思われます)。

代案学校運動と革新学校運動は互いに学び合い、連携する形で学校教育に影響を与えてきています。今では教育部(日本でいう文科省)が出すナショナルカリキュラムにも、革新学校での実践がたくさん組み込まれており、革新学校は公教育のリベラルな変化のモデルとなって、全国に広がり続けています。

(おわり)

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