【学校×スマホ(6)】「性善説」を前提にした学校のセキュリティー

兵庫県立大学准教授、学校における携帯電話の取扱い等に関する有識者会議座長 竹内 和雄
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日本の公立学校のセキュリティーは、極めて緩いものがあります。多くの場合、各教室の鍵は南京錠で、移動教室などの時は、その鍵が職員室の壁面に無造作にぶら下げられています。隙を見て持ち出すことは比較的容易です。「生徒が勝手に合鍵を作って持っていた」という事例もあります。学校の安全管理は、「性善説」を前提に成り立っていると言っても過言ではないでしょう。

許可制で携帯電話の持ち込みを認めている学校の多くは、子供に「授業中は電源を切って、かばんの中で保管するように」と指示しています。しかし、実際には授業中に「こっそり使い」はおろか、「堂々使い」をしている子供もいます。数年前、生徒が教員を蹴り飛ばす動画がSNS上に拡散されて騒動となりましたが、この動画を見る限り、日頃から生徒が授業中にスマホを使っていた様子がうかがえます。この問題を九州の私立高校の特殊な事例と読み解く識者もいましたが、私は学校の今後を考える上で、避けて通れない問題だと捉えています。

以前、とある教員からこんな話を聞きました(個人情報保護のため一部を改変しています)。小学校高学年の支援が必要な男児が同級生4人にはやし立てられて、ズボンとパンツを脱いで走り回らされるという出来事がありました。事態を重く見た担任は4人のうちの1人(女児)を呼び出し、なぜそんなことをしたのかときつく問い詰めましたが、その女児は一向に口を開きませんでした。担任の語気は次第に荒くなり、正座させた上での指導は1時間に及びました。

数日後、その子の母親が学校に怒鳴り込んできました。実は、女児のポケットには、4人グループのリーダーの携帯電話が、LINE電話が通話状態で入れられていたのです。そのリーダーは女児の密告を恐れ、そうしたのでした。

つまり、1時間にわたる教員の指導は盗聴され、録音されていました。その後、その録音を女児の母親が聞くところとなり、「体罰だ、裁判所に訴える」と言い出したのです。実際に訴えられることはありませんでしたが、担任のショックは相当なものでした。

学校のセキュリティーが「性善説」を前提としている限り、同様のトラブルは今後も十分に起こり得ます。その意味でも、きちんとルールを作り、携帯電話の利用に対する子供たちの規範意識を育んでいく必要があります。

教員としては、自身の言動が録画されたり、SNSにさらされたりする可能性を常に念頭に置く必要があります。もはや学校は「聖域」ではなくなったのです。これまで、学校という閉ざされた空間でのみ許されてきたような指導は、これを機に見直してみる必要があるのかもしれません。


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