【 学テの再検証とCBT化の行方(1)】全国学力テストのCBT化は成功するか

福岡教育大学准教授 川口俊明
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文部科学省が実施する全国学力・学習状況調査(以下、この連載では「全国学力テスト」と呼びます)が2007年に始まって、10年を超える月日が流れました。

初めに言っておきますが、全国学力テストは失敗しています。このテストには、当初さまざまな目的が与えられてきました。ある人は、テストを通した点数競争によって日本の学力を向上させたいと考えていました。またある人は、学力テストを使って日本の教育実態や教育政策の効果を調べようとしました。教育委員会や学校の指導改善のためにテストを使うべきだと主張する人もいました。残念ながら現在の全国学力テストは、いずれの目的も果たせていません。

2020年現在、文科省では全国学力テストをCBT化するという議論が行われています。CBTとはComputer-Based Testingの略で、要するにコンピューターを使った学力テストのことです。有名な国際学力調査であるPISAやTIMSSもCBTに移行しつつあり、テストのCBT化は国際的なトレンドと考えられています。GIGAスクール構想において1人1台整備される端末の活用例としても、学力テストのCBT化は期待されています。

もっとも、私はこのままでは全国学力テストのCBT化も失敗する可能性が高いと見ています。紙を使ったテストですら失敗したのですから、より高度な技術が必要になるCBTが成功すると考えるのは、あまりに楽観的でしょう。何より気を付けなければならないことは、学力テストのCBT化はあくまで手段に過ぎないという点です。本来であれば、先に達成したい何らかの目的があり、その有力な手段としてテストのCBT化が提案されるというのが筋でしょう。しかし往々にして(報道も含めて)、テストをCBT化することが前提となっており、そもそも「全国学力テストの目的は何なのか」という肝心要の部分は曖昧なままです。

仮に本気で全国学力テストをCBT化しようというのであれば、私たちは、なぜ現在の全国学力テストが失敗してしまったのか、その原因を反省し、そもそも全国学力テストは何のために行うのかという基本的なところから考え直す必要があります。この連載では、全国学力テストを考える上で必要になる、大規模な学力調査の基礎知識について解説し、望ましい全国学力テストの在り方と、CBT化を成功させるための鍵について説明したいと思います。

【プロフィール】

川口俊明(かわぐち・としあき) 1980年、高知県生まれ。専門は教育学・教育社会学。研究分野は学校教育の効果、学力調査、教育と不平等など。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了。2019年から文科省の「全国的な学力調査に関する専門家会議」委員、20年から「全国的な学力調査のCBT化検討ワーキンググループ」委員を務める。9月に『全国学力テストはなぜ失敗したのか』(岩波書店)を刊行


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