【コロナの先の学習評価の行方(1)】なぜ今、評価のことを考えるのか

京都大学准教授 石井 英真
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コロナ禍において、学びの遅れを取り戻すことが課題となり、とにかく授業を進めることが重視されました。加えて、密を避けるなど、グループ学習もままならない状況があり、アクティブ・ラーニングどころではなく、資質・能力ベースの新学習指導要領の趣旨はどこか忘れられてしまっているかもしれません。

しかし、新しい日常に何となく慣れてきている今だからこそ、改めて授業の軸がぶれていないかを確認することが重要です。また、定期テストの採点や通知表の作成といった評価・評定の仕事において、教師はそれまでの授業と子供たちの学び、評価すべき新たな学力の中身と向き合わねばならず、良い意味でも悪い意味でも、新学習指導要領の趣旨を理解することにつながります。

各教科における評価の基本構造

今回の学習評価改革は、新学習指導要領の資質・能力ベースの改革を、評価においても貫徹しようとするものです。具体的には、小・中学校で実施されている観点別評価を高校でも本格的に実施すること(一貫改革)、資質・能力の三つの柱に対応して観点を再構成すること(一体改革)が提起されました()。そして、資質・能力をバランス良く評価するために、知識量を問うペーパーテストのみならず、論述やレポートの作成、発表、グループでの話し合い、作品の制作や表現などの多様な活動を通した評価(パフォーマンス評価)を用いるなど、多面的・多角的な評価が求められています。

このように書くと、現場からは「思考力・判断力・表現力、さらには主体的に学習に取り組む態度なんて、どうやって客観的に測るのか」「そもそも評価なんてできるのか、これ以上過大な要求を現場に求めても実践できない」といった声が聞こえてきそうです。そうした状況を踏まえ、この連載では、新学習指導要領の趣旨を踏まえた学習評価のポイントについて解説していきます。

その際、評価の「やり方」ではなく「あり方」から考えることで本質を押さえつつ、「働き方改革」にもつなげる見通しを示したいと思います。観点別評価を、子供たちが学びの実力を発揮する「舞台(見せ場)」づくりとして捉えること、「指導と評価の一体化」の名の下に、指導や学習に評価をべったりくっつけて、プロセスで丁寧に評価(記録)すればいいという呪縛から自由になることなどを示したいと思います。

さらに、コロナ禍を経て活発化している、ICTの活用、個別最適化された学び、履修主義と修得主義の問題、学校のスリム化を巡る問題についても、評価の問題は深く関わります。評価という切り口から、「未来の学校」のヒントも示してみたいと思います。

【プロフィール】

石井英真(いしい・てるまさ) 京都大学大学院教育学研究科准教授、博士(教育学)。専門は教育方法学。学校で育成すべき資質・能力のモデル化、授業研究を軸にした学校改革について理論的・実践的に探究している。日本教育方法学会理事、日本カリキュラム学会理事、文部科学省「児童生徒の学習評価に関するワーキンググループ」委員など。著書に『未来の学校 ポスト・コロナの公教育のリデザイン』(日本標準)、『授業づくりの深め方』(ミネルヴァ書房)など多数。


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