【学校×スマホ(10)】子供とスマホの10年後

兵庫県立大学准教授、学校における携帯電話の取扱い等に関する有識者会議座長 竹内 和雄
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昨年、WHO(世界保健機関)が、「ゲーム障害」を国際疾病として認定しました。「ネット依存」や「ゲーム依存」の問題は深刻で、日本でも治療を専門に行う医療機関が出始めています。

以下、私が関わった例(一部を改変)です。猛勉強の末に難関医学部に入学し、一人暮らしをしながら大学へ通うこととなったAという学生がいました。その母親のもとに、大学から前期、取得単位が0だと連絡がきました。驚いた母親が下宿先に足を運んでみると、Aは部屋にこもってゲーム三昧。母親はしばらくの間、泊まり込みました。Aは、再び大学へ行き始めたので、安堵した母親は家に戻りましたが、ほどなくAは元の引きこもり生活に戻り、最終的には大学を辞めて、実家へ戻ることとなりました。

Aは、医学部に合格する学力を持ちながら、自己をコントロールする力が乏しかったため、大きな挫折に直面しました。同様のケースは全国にごまんとあるに違いありません。

スマホにこうした危うさがあることは、子供たちも認識しています。特にコロナ後、そういう声をよく聴きます。先日、中学生から「自分でコントロールするのは難しい」「テスト前は親に預かってもらう」「制限をかけてほしい」などの声を聞きました。これからスマホと長く付き合っていく彼らにとって、自己コントロール力は不可欠ですが、一方では大人がきちんと制限をしてあげる必要ももちろんあります。このことは、交通事故防止に向けて「安全教育」を施す一方で、取り締まりを強化したり、自動車の安全装置(エアバック、自動ブレーキ等)を充実させたりするのと同じロジックです。

今でも特定の装置を置けば、その周囲は通信ができなくなる技術がすでに開発されています。学校での活用も検討されていますが、これを置くと、近隣住民にまで影響が及ぶので実用化には至っていません。でも、学校の敷地内だけ制限が掛けられる日はそう遠くないでしょう。保護者が子供の携帯使用を制限する「ペアレンタルコントロール」の機能も、より簡単・便利に使えるようになります。

この連載でも繰り返し述べてきたように、10年後には子供たちがごく普通に、学校へ携帯を持って行くと私は思っています。そうでなくてはこの国の未来は暗いでしょう。その時、子供がきちんと自制心を働かせながらスマホと向き合い、健康で充実した日々を送ることができるのかどうか、今まさに重要な局面を迎えています。子供は、これからの社会を担う宝物で、彼らのために英知を結集する時です。今回の通知はその流れの一つと認識しています。


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