【学テの再検証とCBT化の行方(4)】指導改善に使えるのか

福岡教育大学准教授 川口俊明
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現在、全国学力テストは対象学年全員を対象に、全員が全く同じテストを受験する悉皆調査で実施されています。日本全体の学力を把握するだけなら、数千人を標本抽出すれば十分なのですが、全ての教育委員会や学校において「指導改善に利用する」という理由で、この実施方法が正当化されてきました。

残念ながら、テストを「指導のために使う」という発想こそ、全国学力テストの失敗を招いた主因の1つです。おそらくテストを指導に活用しようと考える人の頭の中には、教室で行う確認テストのイメージがあるのだと思います。ここでいう確認テストとは、学習の成果を確認するためのテストのことで、最終的に全員が満点を取ることが好ましく、また全員が同じテストを受験することが前提となったテストのことです。

あいにく政策の効果を調べたり、全国の学力実態を把握したりしようと思うと、こうした確認テストの特性は裏目に出ます。最終的に全員が満点を取ることを想定して作ったテストの難易度は低くなりがちなので、例えば少人数指導の効果を調べようとしても、導入している学校もしていない学校もどちらもテストの出来が良く、少人数指導の効果はよく分からないということになりかねません。

また、全員が同じテストを受験すると、テストに使える時間には上限があるので、どうしても出題範囲が偏ります。すると、全国の子供が受験したにもかかわらず、日本全体の学力実態はよく分からないという状況が生じるのです。何より全員が受験するテストは、どうしても自治体や学校間で点数の比べ合いが発生しますから、不正を働く人が現れる危険があります。

以上のような問題点を回避するため、教育研究で利用されている大規模な学力調査では、満点や0点の子供が出ないように、統計的にテストの難易度を調整します。また、幅広い問題を出題するため、一人一人の子供に異なるテストを与えるという特殊なテスト設計を採用し、抽出調査で行うことが一般的です。こうした手順を踏むと、指導のためには使えませんが、全体の学力を正確に測るテストが設計できます。

以上のように、「指導のために使う」ことと「全体の学力を正確に測定する」ことを1つのテストで両立することは極めて困難です。全国学力テストを「指導改善に使う」と言う人は、その発言が「日本全体の学力は分からなくても構わない」と言っているのとほぼ同義であることを、肝に銘じておくべきです。


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