【学テの再検証とCBT化の行方(6)】何のために行うのか

福岡教育大学准教授 川口俊明
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全国学力テストは何のために実施するのでしょうか。文科省によれば、現在の全国学力テストには、大きく二つの目的があるとされています。一つは、全国の学力実態を把握して政策立案に生かすこと。もう一つは、個々の学校の指導改善に生かすことです。近年は後者が強調されており、全ての児童生徒を調査する悉皆(しっかい)実施を正当化する根拠となってきました。

もっとも、全国の実態を把握するという目的と、指導改善に生かすという目的の両立は容易ではありません。本連載でも触れてきたように、指導改善を前提に設計されたテストで全国の実態を把握するのは困難です(第4回)し、学力の変化を把握することを可能にするIRTを実装したテストでは、指導のためにテスト問題を公表することができません(第5回)。一つのテストの中で、実態把握と指導改善を両立できれば効率的だと思う気持ちも分かりますが、技術的には容易ではないのです。

それでは、実態把握と指導改善のどちらを優先すべきなのでしょうか。私は、実態把握だと考えます。なぜなら、全国的な学力実態を把握することは、国にしかできないからです。指導のために学力テストを活用することは、個々の自治体や学校でも可能です。そもそも全国学力テストが始まる前も、個々の学校では当たり前のように、指導のために日々のテストを活用していたはずです。

児童生徒の状況は、学校によって違います。国がわざわざ平均的な児童生徒を想定したテストを作ってそれを配るというのは、「お節介」です。そもそも、目の前の子供の実態を見極めて必要なテストを選択するのは、教師の腕の見せ所ではないでしょうか。全国学力テストは、これから必要となる学力を先生方に伝えるメッセージなのだと言う人もいますが、そこには「学校の先生は今から必要とされる学力もよく分かっていないようだから教えてあげよう」という上から目線の発想が透けて見えます。

これからの社会で必要な力は「自ら考え、学ぶ力」であると言われます。ならば、それを子供に伝える教師にも同じ力が必要でしょう。少なくとも国は、一般の教員にはそのような力が備わっていると信用すべきです。仮にそれができていないと思うのであれば、学力テストを使って自らの考えを押し付けるのではなく、まずは教師が学ぶ時間や考える時間を確保することに力を注ぐべきでしょう。


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