【学テの再検証とCBT化の行方(8)】何のためにCBT化するのか

福岡教育大学准教授 川口俊明
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現在、全国学力テストをCBT化するという議論が進んでいます。国際学力調査であるPISAやTIMSSもCBT化がされていますから、これは国際的な潮流と考えてもよいでしょう。

では、CBTの利点は何でしょうか。まず挙げられるのは、受験者の学力に見合った出題が可能になるという点です。紙のテストの場合、テスト中に問題を差し替えることはできませんから、受験者にとってテストが簡単すぎる(あるいは難しすぎる)というケースが生じ、正確に学力が測定できないことがありました。これに対してCBTでは、最初の数問で様子を見て、受験者の学力が高ければ難易度の高い問題に、低ければ難易度の低い問題に差し替えることで、より正確に学力を測ることが可能です。ちなみにこの前提となるのが、個々の問題に難易度があると考えるIRTの発想です(本連載の第5回参照)。

加えてCBTでは自動採点が可能になります。択一式の問題であればテスト終了直後に正否を表示できますし、将来的には記述式の問題でも自動採点が可能になると言われています。採点の手間がなくなりますから、テスト結果を素早くフィードバックできるでしょう。

紙のテストでは考えられなかった出題ができるというのも利点です。動画を使った問題や、図形を操作して回答する問題も作れます。将来はVR(仮想現実)を使って、まるで実際に会話しているかのように英語のテストを受けることが可能になるかもしれません。

さらにインターネットを活用できるなら、いつでも・どこでも自由に試験が受けられるようになります。今より気楽に受験できますし、学校に通うことができない子供たちも、インターネットに接続する環境さえあれば自宅から試験に参加できるようになります。

CBTは、特別な支援が必要な子供たちにも有効だと考えられています。例えば、視覚障害のある子供のためにディスプレー上で文字を拡大したり、あるいは音声で問題を読み上げたりといったことができます。図形を使う問題は視覚障害のある子供には難しいでしょうが、CBTとIRTを駆使すれば、その場で同等の難易度だと考えられる問題と差し替え、障害に配慮したテストを行うこともできます。

このようにCBTでは、紙のテストでは考えられなかったテストを実現することができます。もっとも、こうしたCBTの利点を十全に活用するには、乗り越えなければならないハードルがいくつもあります。次回は、そうした点を見ていくことにします。


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