【コロナの先の学習評価の行方(8)】そもそも情意領域の評価をどう考えるか

京都大学准教授 石井 英真
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「関心・意欲・態度」の評価は、さまざまな問題を抱えてきました。それは多くの場合、挙手回数を数えたり、ノートや提出物を点検したりといった具合に、取り組みの積極性や努力度、授業態度を対象としており、主観的にならないようにと、教師は証拠集めに追われがちでした。

生産的な「思考の習慣(habits of mind)」

一方、テストの点数が良くても授業態度が悪いと良い成績をもらえないので、やる気をアピールし、器用に振る舞う子が得をするなど、評価が管理的な機能を果たしてきました。その結果、保護者が総合評定や内申点に不公平感を持つといった問題も生じているように思います。

性向(ある状況において自ずと特定の思考や行動を取ってしまう傾向性や態度)や人間性といった価値規範、道徳的価値に関わるものを評価することについては、個々人の性格やその人らしさ丸ごとを値踏みする全人評価につながり、価値や生き方の押しつけに陥ることが危惧されます。

これに対して、物事を鵜呑みにせずに批判的に思考しようとする態度(思考の習慣)などの認知的価値については、認知目標の実現と密接に関わりかつ指導可能な部分について、評価の対象とすることは考えられます。その際も、情意を「評価」することと「評定」することとを区別して議論することが重要です。情意領域については、全人評価や価値の押し付けにつながる恐れがあるため、目標として掲げて評価はしても、評定することには慎重であるべきです。

ただし、情意領域の評価については、授業やカリキュラムの最終的な成果を判断する総括的評価も有効です。例えば、単元の終了時にその単元で扱った社会問題に対してクラスの大部分が望ましくない態度を抱いているなら、それはカリキュラムの改善を促す情報となります。そして、そうしたカリキュラム評価に必要なのは、質問紙などによる集団の傾向を示すデータのみです。実際、PISAなどの大規模学力調査では、学習の背景を問う質問紙調査でそれがなされています。

審議過程ではさまざまな議論がありましたが、新しい指導要録においても態度観点が残り、ABCで評定する形となりました。上記のような原則を念頭に置きながら、「出口の情意」(本連載第7回参照)としてそれを捉え、「思考・判断・表現」と一体のものとして、メタ認知や思考の習慣などの準認知目標として捉えていくとともに、形成的評価と評定とを区別して「指導の評価化」に陥らないようにすることが肝要です。


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