【学テの再検証とCBT化の行方(10)】教員に何が求められるのか

福岡教育大学准教授 川口俊明
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本連載では、全国学力テストの失敗と、現在議論されているCBT化に関する基礎的な情報をお伝えしてきました。これまでの説明を通して私が皆さんに伝えたかったことは、全国学力テストについて考えるためには、教員ももっと学ばなければならないということです。

これまで解説してきたように、PISAに代表される大規模な学力調査は、教室の中で行うテストとは大きく性質が異なります。IRTをはじめとするテスト理論の知識なしには、設計はおろか、その結果を理解することも容易ではありません。より高度な技術が必要になるCBTともなれば、なおさらです。

「学力調査の知識など、自分には必要ない」と思う人もいるかもしれません。しかし、管理職になったり、指導主事として教育委員会に勤めたりすれば、学校を対象にした各種の調査に関わる機会はいや応なくやって来ます。場合によっては、学力調査の設計や実施に携わることもあるでしょう。ここでうっかり教室のテストのつもりで「指導に役立つテスト」を作ろうとすると、現在の全国学力テストの失敗を繰り返すことになります。

また、いくら適切に設計されていたとしても、テストの点数は人々の関心を引きやすいものです。平均点が「高い・低い」といったことに一喜一憂するのではなく、テストから「言えること・言えないこと」を切り分けて教育に生かすためには、やはりテストに関する最低限の知識は必要です。特にCBTは設計が高度で、点数の算出される過程がブラックボックス化しやすいため、基礎知識がないと結果に振り回されることになりがちです。

全国学力テストに関しては、本連載で取り上げた話題以外にも、そもそも調査でどのような学力を測るべきなのか、調査の設計や実施を担う専門家集団をどう組織するのか、「即戦力!」に偏りがちな教員養成課程のカリキュラムをどう見直すのか等々、考えなければならない論点が数多く存在します。超多忙と言われる学校現場では、こうした論点を考える時間はなかなか取れないかもしれません。しかし、学力テストと関わる機会の多い現場の教員が声を上げなければ、今後も現在の全国学力テストの失敗が繰り返されていく可能性は高いでしょう。

ぜひ、望ましい学力テストの在り方を学び、そして発言してほしいと思います。そうした一人一人の声が、将来の日本の教育を変えていく力になると、私は信じています。本連載が、そのきっかけとなれば、これに勝る喜びはありません。(おわり)


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