【写話から浮かび上がる子供(4)】郷土愛な子供たち

博報堂教育財団こども研究所
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広島県江田島市の北部、江田島湾に面したところにある「第1術科学校」の写真を説明するA君は、どこか誇らしげだった。彼が「江田島のシンボル」と言う第1術科学校は、かつての海軍兵学校で、「ここに全国のトップの人が集まって来て」いて、「僕のひいおじいちゃんがここに入ったんです」と言う。彼の話を聞いていて、ふと「郷土愛」という言葉が浮かんだ。

どの調査地点でも、住んでる地域について問われると、「好き」と即答する子が多いのに驚いた。そして、子供たちの語りの中には、住んでいる地域に対する、慣れや親しみを超えた「愛着」や、時には「誇り」があった。

前橋市のCさんが撮った赤城山の紅葉

前橋市の子供たちの写真には、見頃を迎えた赤城山の紅葉がたくさん写っていた。この土地での山の存在の大きさを感じさせる。一方で、東京に比較的近いからか、前橋を東京と比べて語る子もいた。Aさんは「(前橋は)そんなに気を遣わない。田舎だったら、ワーッとかも超遊んでもいいし。東京とか音を気にしちゃう」と言い、B君は「(東京と比べて)事故とか事件があんまりない」と言う。「窮屈で怖い東京」との対比で、より一層「安心して、のびのびできる」という、彼らの前橋に対するイメージが伝わってきた。

山田町のD君は、地元にある氏神様を「大杉様」と親しみを込めて呼び、年に一度の例大祭の様子を熱く語った。「見ちゃいけないんだけど、神輿の中に魂というか、何か分からないけど入ってる」と言う。小学5年生となった現在は神楽に参加しているが、高校生になったら神輿を「やる!絶対やる」という言葉に、土地の人々に受け継がれてきた祭を自分が受け継いでいくんだ、という意気込みが感じられた。

「郷土愛」の背景には、親世代での地元志向の高まりの影響があるかもしれない。学校で行われているふるさと学習などの取り組みの成果もあるだろう。しかし、インタビューを通して、その根底に、自分を取り巻く環境を肯定的に捉えようとする、子供たちの素直な心を感じた。

ところで、住んでいる地域についての質問を始めたのは、2回目の江田島市からだった。最初に調査した中野区でも聞いておけばよかったと今でも後悔している。もし聞いていたら、大都会に住む子供たちは自分たちの「郷土」について、何と答えてくれただろうか。


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